タツノコプロ展は「父子のおでかけ」に最適だ ヤッターマンを「体感」できる
物販コーナーの中でも、東武百貨店とのコラボならではの目玉が、タツノコ作品をモチーフにした伝統工芸品だ。キーホルダーなど、お土産として気軽に購入できるものもある。また、伊万里・有田焼の「ハクション大魔王の壺」は1万2960円。「蛸唐草(たこからくさ)」という伝統的な文様を用いて職人が1点1点絵付けをしたもので、“目利き”ではないが、この価格はかなりお得なように感じられる。
「品質・価格ともに百貨店の客層とも合致する商品」(中津氏)とのことで、初日午後の時点ですでに1点購入されていた。このように、世代を超えて長く愛されるタツノコプロの世界が楽しめる企画展となっている。
そして今回注目されるのが、この10月から放映される『Infini-T Force』に関する展示だ。これまでのタツノコ作品に比べ、より若者や、海外も含むコアなアニメファンへの訴求を狙っている。
まず『科学忍者隊ガッチャマン』(1972年)、『新造人間キャシャーン』(1973年)、『破裏拳ポリマー』(1974年)、『宇宙の騎士テッカマン』(1975年)という初期タツノコ作品の4人のヒーローを一挙に登場させているところが大きな特徴。アメリカンコミックで映画化もされている『アベンジャーズ』を彷彿とさせるシステムだ。3DCGによるリアルな映像も注目される。
タツノコファンで言えば真ん中の世代に位置するある40代の男性は、「ガッチャマンは必ずハッピーエンドになるわけではなく、あまり好きではなかった。ギャグ要素の強いヤッターマンは好んで見ていた」という。
今でこそアニメファンに年齢は関係ないが、当時はアニメと言えば主に子どもが見るものだった。『ガッチャマン』は設定がシリアスで全体に陰があり、小さな子どもには難しい部分もあったかもしれない。もちろん、メカのかっこよさもあって人気が高く、主題歌を替え歌にして歌っていた子どもも多かった。
創業時からオリジナルアニメにこだわり
新作では、タツノコの初期作品に垣間見える「大人の魅力」を、現代的なキャラクターや美しい映像とともにストレートに味わえるのではという期待が膨らむ。
「創業時からオリジナルアニメにこだわり、多くの作品について単独で著作権を保有しているタツノコプロだからこそ可能になりました。往年のファン層をも満足させつつ、若者に刺さるアニメとして制作しています。今回の展示会も、昔からのファンには懐かしがりながら、新しいファンには新鮮な気持ちで、楽しんでいただきたいと思っています」(桑原氏)
2015年の日本のアニメ市場は1兆8253億円で、前年比12%増。純粋なアニメ制作の売り上げも海外を中心に増加を続けているが、キャラクター商品などの「アニメ産業市場」が大部分を占め、成長も著しい(「アニメ産業レポート2016」日本動画協会)。アニメは子どもの娯楽であった時代から、すべての人を対象としたカルチャーとして育ってきた。
そして日本は世界の中で、そうしたアニメ文化を牽引する存在だ。普遍的な作品は時代を超え、形を変えて幾度でもよみがえる。タツノコプロにおいて長きにわたり蓄積されてきた「種」が、新たな時代にあってどのような花をつけ、実を結ぶか。今回の「タツノコプロ55周年Go!Go!記念展」がどのように受け入れられるかが、今後を占うひとつの指標となるのではないだろうか。
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