中国の地方政府、”陰の銀行”で膨らむ債務

水面下で進む"危機”

高金利の信託融資

信託融資は中国の債務問題を探るうえで有効な手がかりとなる。銀行融資とは異なり、信託会社は通常、投資資金を集めるために金融商品の販売資料で融資先を公表している。さらに、投資資金がどのように活用されるかといった詳細も公表していることが多い。

信託融資は通常の銀行借り入れや債券・株式市場で資金を調達できない借り手にも貸し出しを行う。Use-Trust のデータをみると信託融資を含むシャドーバンキングの不透明な世界が浮かび上がってくる。

リサーチ会社CNベネフィットのFan Jie氏は「現時点で信託融資は中国に参入する上で最もハードルが低い資金調達方法だ。そのため、もちろん借り入れコストは高くなる」と指摘する。

ロイターが分析した信託商品は、投資家に対して年9─12%のリターンを提供する。これは銀行が販売する金融商品の通常のリターン(5─7%)を大きく上回る。

通常融資の1─2%となる信託会社への手数料を入れると、地方政府や企業は1─2年の借り入れに最大15%の金利を支払う。一方、同様の銀行融資の金利は7%程度。高金利により債務返済は困難になり、借り換えがますます増える。

ロイターの調べでは、信託融資のうち、借り換えに使われたのは4%に過ぎなかった。ただ、37%は「運転資金」や「流動性確保」など使途があいまいで、専門家はこうした融資もたいていは借り換えのための資金調達、と指摘する。さらに8%は使途が明らかにされていない。

ある信託会社の幹部は、地方政府は、新規融資を既存の債務返済に充てる方法を心得ている、と指摘。「審査を行っている段階でそれは分かるが、指摘する者は誰もいない」と語った。

天津市の例

中国で5番目の規模の天津市の例をみると、赤字を抱える地方政府や企業がいかに中国のシャドーバンキングに頼っているかを垣間見ることができる。

ロイターの信託データの分析と天津市が公開している同市最大の資金調達機関の資料によると、同市が過去の債務返済のために高金利の資金調達に依存していることが明らかになる。

同市は金融センターの創設に向け2009年から1600億ドル以上を投じている。これは三峡ダム建設に投じられた資金の約3倍。

2011年には16.4%の成長を記録した天津市だが、47の超高層ビルが建設された金融地区は、国内最大の無用の産物となっている。北京に既にオフィスを構えている主要金融機関が天津市でもさらにプレゼンスを高める理由は見当たらない。

地方政府は直接資金を借り入れることが禁じられているため、天津市も他の都市同様、資金調達機関を通じて借り入れを行った。

融資関連資料によると、同市が債務返済のために新規融資を受けたことは明らかになっていない。ただ、借入額や時期をみれば返済のための資金調達であることはほぼ間違いない。

Use-Trust Studioのデータによると、2012年の春に同市の最大の資金調達機関であるTianjin Infrastructure Construction and Investment Group と子会社は信託融資で40億元を借り入れたが、その大半は金利が10%を上回っていた。

CITICトラストからの20億元の融資に関しては、CITICのウェブサイトでは、調達資金は複数のプロジェクトの建設および運転資金に充てられる、と公表されている。

ただ、新規融資から数日以内に、30億元相当の2009年融資の元本と金利支払いが期日を迎えることをみれば、資金が実際にプロジェクトのために使われたかは疑わしい。

CITICトラストのバイスプレジデントWang Daoyuan氏は、貸し手にとり、貴重な顧客の融資が返済期限を迎える時に新規融資を行うのはよくあることだ、と語った。

天津市公表資料によると、同市の資金調達機関は、2013─2019年の間に2460億元の融資処理コストに直面する。投資のマイナスリターンが何年も続き投資コストを回収できる見込みが当面ないなか、天津市は債務返済のための借り入れ継続を余儀なくされる可能性が高い。

(Gabriel Wildau記者;翻訳 伊藤恭子;編集 内田慎一)

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