日本人リーダーに最も欠けている「視点」 本当に自信を持つにはどうしたらいいのか
そこで、グラール氏はまずCEOから働きかけ、その後、その下で働く中間管理職にも同じ指導をする形式を取るようになった。この過程で、グラール氏は東洋哲学や西洋の習慣、そして自身の経験から得たアイデアを融合させ、独自のコーチング・プログラムを作り上げた。
が、コーチング事業を始めた当初は資金的な苦労が絶えず、2年後には断念しようと考えた。それでも、受講した人たちから「このプロジェクトには価値があるからあきらめないでほしい」と背中を押され、踏ん張り続けた。
多くの人は自分が誰だかわかっていない
こうした中、同氏に目を付けたのが、ドイツの食器メーカーであるビレロイ&ボッホの日本法人だった。同社と初の企業契約を結んだのを皮切りに、同社の元CEOや顧客の口コミで、グラール氏のコーチングは徐々に知られるように。現在では、シャネル、ヴァンクリーフ&アーペル、ゴディバ、ペルノ・リカール、そしてシュウウエムラなど、40以上の有名ブランドの幹部がグラール氏の指導を受けるほどになった。
日本にあこがれてやってきたものの、日本でようやく得た仕事で満足感を得られなかったグラール氏。その後、紆余曲折はあったものの、現在では自分の仕事から充足感を得ている。そのグラール氏が、日本の顧客を通じて感じている「問題」とは何だろうか。
同氏によると、多くの人は自分が誰なのかよくわかっていないという。自分を探すには、恐怖や他人の意見に左右されない空間で、誰かに話を聞いてもらう必要がある。グラール氏は、こうした空間を提供することによって、ビジネスリーダーたちのライフワークを見つける手助けをしているという。
グラール氏は、「リーダーシップとは単に他者を導くだけでなく、自分自身について、そして自分の強みや方向性を知っていて、自分の人生の舵を切ることだ」と話す。「ジョブズのような人は、目的を先に話す。なぜだろうか? 先に個人の目標をのべ、その次にそれを成し得る方法、そこに(それを可能にする)モノが続く。自分の中にある『なぜ』に対する答えを持っていれば、いきいきと過ごせるようになる」。
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