老朽マンション、建て替えタダは都市伝説だ ローンが組めず資金が捻出できない高齢者も

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それでも住民の持ち出しがまったくない事例はごく一部にすぎない。現在建て替え準備中の若潮ハイツ(千葉市)は、住戸数が500戸から1009戸へと2倍に増えるが、住民の費用負担は避けられないという。また、余剰容積があっても、郊外や、駅から遠いなど不動産価格の低い地域では、十分な売却益を得られず、住民の負担軽減は厳しくなる。

もっとも、容積率に余裕があるマンションはそう多くはない。四谷コーポラス建て替えの事業協力者である旭化成不動産レジデンスの主任研究員・大木祐悟氏は、「ほとんどのマンションは建て替え後もほぼ同じ大きさにしかならない」と指摘する。

建て替えで戸数が減ってしまう場合も

民間分譲マンションは容積率の上限ギリギリで建てられていることが多い。分譲後に設定された日照制限などで、建て替え後は小さい建物しか建たず、戸数が減ってしまう場合もあるという。

「マンション居住者は、将来の建て替えに備えて早いうちから資金を準備する必要がある」(大木氏)。人手不足などによる建築コスト上昇も懸念材料だ。

戸建て住宅であれば建て替えの自己負担は当たり前だが、マンションの場合、積立金のある修繕計画には目が行くものの、建て替えへの意識は薄くなりがちだ。自分たちの資産を守り、価値を維持する責任を負う覚悟は、戸建てと同様に必要になる。

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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