老朽マンション、建て替えタダは都市伝説だ ローンが組めず資金が捻出できない高齢者も
東京都が1953年に分譲した日本初のマンション「宮益坂ビルディング」(渋谷区)も排水管やエレベーターなど設備の老朽化を受けて、6月に建て替え工事が始まった。建て替えが必要なマンションは今後ますます増えそうだ。
だが、国土交通省によると、これまでに建て替えに至った例は、予定も含めて252件にとどまる。
障害となっているのは住民の経済的負担だ。解体費や建築費は原則、区分所有者が負担する。一般的に各戸で1000万円単位の資金が必要になる。老朽マンションの住民は高齢者が多く、住宅ローンを組むことが難しい。建て替えには区分所有者の5分の4以上の賛成が必要になるが、資金の捻出が難しい住民も少なくないため、合意形成のハードルが高い。
タダで建て替えられるという都市伝説
これまでに建て替えが実現したマンションは、容積率に余裕があり住戸数が大幅に増えるケースが多かった。新たに分譲する住戸の売却資金を建て替え費用に充てることで、住民負担を減らせるからだ。
国内最大の建て替え事案として知られる多摩ニュータウンの諏訪2丁目住宅では、建て替えによって640戸が1249戸へ倍増した。新規分譲分の売却益によって、ほとんどの住民は持ち出しがゼロになった。
あるデベロッパー幹部は「マンションはタダで建て替えられるという都市伝説が生まれてしまった」と複雑な表情を浮かべる。建て替え後の資産価値上昇を狙った投資家が老朽団地を買いあさる事態も起きた。
都市再生機構(UR)などが高度経済成長期に分譲した集合住宅(団地)は、都心近郊ながら容積率にゆとりを持って建てられた物件も多い。
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