「この世の終わり」を思わせるイギリスの日常 もはや「悪いニュース」しか出てこない
しかし、悲劇であると同時に複雑でもあるこのような事件で、いまだに逮捕者が出ていないということで警察を責めたり、自らの職務を開始する前に火災の原因についての質問を打ち切ったと非難される判事に対し、別の会議で軽蔑の言葉を浴びせたりすることは、正当化できる反応ではない。
普段は信頼されている警察や司法当局に、最近怒りの矛先が向けられることが多いのは、この怒りの裏にある恐怖を表している。イギリス社会に定着した高い不確実性から来る恐怖であり、また、世界に非常に大きな問題が存在しているということへの恐怖でもある。そして、それらは解決できるものではない。
これらは実際には解決策のある問題なのだが、行き詰まっている状況にある。79人の命を奪ったグレンフェルタワー火災で、警察が手を抜いて当局者たちに職務怠慢、またはそれ以上の責任を追及した結果、証拠不足で裁判に負けるかもしれない。または、警察が慎重に手続きを進めた結果、興奮した大衆や、票集めに奔走する政治家たちから警察自体が職務怠慢というレッテルを張られるかもしれない。
ブレグジットは破滅的な選択だったのか
イギリスで差し迫っている問題はブレグジット(EU離脱)と、先月の総選挙後に出てきた腐敗政治への非難だ。ブレグジットは40年以上にわたり英国の法律、政治、経済の枠組みを統治してきた条約に幅広い変更を加えるという苦痛の連続であり、国内政治は、与党保守党内で権力を求める動きにより活気づいている。保守党の党首テリーザ・メイ首相の影響力は、大勝しなければならなかった選挙でほぼ敗北するほどまでに弱まっている。
イギリスの官公庁や、重要な国立機関のリーダー、職員たちは、ブレグジットが破滅的な選択肢だったと非常に強く感じている。カナダ人の経済学者マーク・カーニーが総裁を務めるイングランド銀行は、政府の意向に忠実に従っているが、ブレグジットが実施されたときには、ロンドンの金融街シティから主要機関が多数撤退し、景気が悪化することを内心では懸念している。
この国で強まる緊張感は確実なものになるかもしれない(少なくともある程度は)。それは、もし政府に、ウェストミンスター議会に再び主権を持たせたいという多数派の要望を尊重する反対派がいればの話だが、現実はそうではない。