歯科医にかかる人が知っておきたい最新事情 口の中をちゃんと見るのに「CT」が有効だ

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(5)根管治療

歯の神経を抜いて根管治療をするときも、歯科用CTを用いることで痛みの再発を防ぐことができます。歯の根は複雑な形をしていることも多く、1本だけのこともありますが2~4本に分かれていることもありますので、破片が残らないように丁寧に抜き、空洞部分に薬剤を詰めていかなくてはなりません。

ですが、手の感触だけに頼っていると、歯の破片が残ったり薬剤を詰め忘れたりすることがあります。薬剤がしっかりと詰まっていないと細菌が繁殖し、再度、痛みや腫れを引き起こしてしまいかねません。目や手の感触だけではわからない部分を正確に知るためにも、歯科用CTの撮影が必要になるのです。

(6)親知らずの抜歯前検査

親知らずならすべて抜いてしまっても良いというわけではありません。特に下の親知らずの根周辺には神経や血管が入っている下顎管がありますので、抜歯によって下顎管が傷つくと想定されるときは抜歯以外の治療を考えなくてはいけません。

レントゲンでも下顎管の位置をある程度特定することができますが、親知らずの根に近いかどうかを正確に知るためにはCT撮影も実施するほうがより正確な判断ができるでしょう。

(7)歯列矯正前の検査

歯列矯正をすることでどのような歯並びになるかを、歯科用CTを使って正確にシミュレーションすることができます。かみ合わせがどうなるかも予想することができますので、より美しい歯並びに矯正することができるのです。

(8)過剰歯の測定

永久歯が普通以上の本数ある過剰歯。そのまま生えてしまうと、歯並びが悪くなったり、必要な歯が生えて来られなくなったり、歯ぐきの横側や内側などの正常でない場所から生えてしまったりすることにもなります。

その場合は、歯ぐきの内部にある時点で抜歯するのが良いのですが、レントゲンでは正確な位置をとらえることが難しく、不必要な部分まで切開することにもなりかねません。歯科用CTを使って過剰歯の正確な位置をとらえ、歯ぐきを切開する部分を最小限にして過剰歯の抜歯を実施します。

いつでもCTを使えばいいわけではない

CTは立体的に表示されるだけでなく解像度が高いのも特徴です。正確な診断には最適なツールともいえます。ですが、レントゲンと比べると被曝量も高くなりますので、いつでも歯科用CTを使えば良いというものではありません。

レントゲンで大丈夫なときはレントゲン撮影を利用し、外科的手術や膿の確認が必要なときにCTを用いるのがベターです。現在のところ、歯科用CTを導入している歯科医院は限られていますので、そのような治療を要望される場合はCTを導入している歯科医院を探してから出向くといいでしょう。

小林 保行 歯科医師/キーデンタルクリニック院長

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こばやし やすゆき / Yasuyuki Kobayashi

2004年東京歯科大学歯学部卒業、表参道の総合歯科医院に勤務。2006年市谷の歯科医院にて副院長として勤務。2008年に赤坂見附駅から徒歩1分の場所にキーデンタルクリニックを開院しました。開院以来、「確かな技術で納得の治療を」モットーに、あごや歯の場所を細かく分析をし、歯だけでなく口回りを総合的に診断。現在はムシバラボというサイトを立ち上げ、歯や口周りの情報を発信。主な資格はDHA岩田セミナー認定医、総合治療セミナー「一の会」認定医、クリアアライナー矯正認定医、日本顎咬合学会所属、日本インプラント学会所属、消防庁認定、救命技能講師修了。

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