サントリー「セクハラ動画」炎上は防げたか 「失敗の本質」と「再発防止策」を考える
この方は男性で「自分はこの表現には問題があると思うが、その懸念を社内で理解してもらうのが難しい」と話していた。これは、独断専行で決めそうになっていたのが女性であり、消費者の多様な価値観に配慮していたのは男性という事例だった。そこで筆者から過去に起きたいくつかの炎上事例について伝え、社内で異論があるなら、きちんと話し合いをしてから決めたほうがいいのでは……と話した。この企業では社内のチェック体制を見直した、という。
こうした経験からも、女性のほうが敏感で男性のほうが鈍感という決めつけは間違っている、と思う。問題は、組織内で異論を言えるかどうか、さまざまな意見を反映できる体制があるかどうか、ということだ。
ここで重要なのは「ダイバーシティ・マネジメント」の発想だ。女性活躍から一歩進んで、多様な価値観を持つ人を活かすマネジメントである。
「女性活用」が性別という属性に目を向けるのに対し、ダイバーシティ・マネジメントは価値観など内面の違いにも目を向ける。さらに、最近ではダイバーシティだけでなくインクルージョンも大切と言われるようになってきた。単に多様な人が「集まって」いても、能力が活かされなくては意味がないからだ。
今回の例でいえば、単にチームに女性がいることより、「この動画はおかしいのではないか」という感覚を持つ人の声が生かされることが必要だった。
「ダイバーシティの推進」を掲げているサントリー
サントリーは、企業として「ダイバーシティの推進」を掲げている。そこには「多様な従業員が『やってみなはれ』を発揮できるよう、従業員の属性の多様化を推進し、違いを受け入れ、活かす組織づくりに取り組んでいます」と書かれている。ダイバーシティ経営の重点領域は「年齢を超える」「性別を超える」「国境を超える」「ハンディキャップを超える」であり、取り組みが評価され、経済産業省の「ダイバーシティ経営企業100選」にも選出された。
問題となった動画のような女性観は「国境を超え」たとき、完全にNGである。SNSなどで批判を受け、すぐに動画を非公開にしたのは、こうした常識を持つ人が社内にいるからだろう。そういう声が最初から生かされていれば、そもそも炎上しなかっただろう。
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