小田急、保存ロマンスカーなど一部を解体へ 複々線化で車両スペース不足「苦渋の決断」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
2006年に引退した9000形。保存しているのが1両のみのため、解体はしない(記者撮影)

関係者によると、3100形は先頭車2両と中間車1両、10000形は先頭車1両、20000形は先頭車と2階建て中間車1両、2200形は1両を残す予定だ。展望室のあるロマンスカーの先頭車や2階建て車両などの特徴ある車両は少なくとも1両ずつ残ることになる。来春の新型ロマンスカー登場にともなって引退する見込みの7000形LSEについては「現時点では明確に答えられない」(小田急)としている。

保存車両の一部解体は、2018年3月の複々線化に伴うダイヤ改正で列車を増発するため、車両基地に収容スペースが必要になることが理由。同社によると、今後の保存場所については検討中で具体的には決まっていないが「一部はやむを得ず解体するものの、歴史的価値があり人気の高いこれらの車両はしっかり後世に伝えていきたい」と話す。

小田急が車両の保存を続けてきた理由について、ある関係者は「車両の性能はどんどん向上しているが、同時にブラックボックス化も進んでいる。基本的な構造や動きがわかる過去の車両は技術の伝承という点でも重要」とその意義を語る。

保存車両の一般公開は?

小田急が保存しているこれらの車両は、長いものでは保存期間がすでに約30年にも及ぶが、一部のイベントの際などを除けば一般には公開されていない。近年は、鉄道各社が博物館や資料館などで保存車両を一般向けに公開する例も増えているが、同社は「現時点では博物館などの施設を設けるという具体的な話はない」という。

小田急電鉄OBで、同電鉄や鉄道全般に関する著書が多数ある生方良雄さんは、今回の件について「少なくとも1両ずつは残るということで、やむを得ないかと思う。今後もこのようなケースはあり得るので、たとえば『鉄道友の会』が保存を続けている鉄道会社を顕彰するなど、文化的・歴史的遺産として車両保存を続けられる仕組みが必要では」と話す。

今回、一部の車両を解体しても小田急の保存車両は計15両あり、私鉄による車両保存としては規模が大きい。同社も「歴史的価値と人気の高いこれらの車両を広く後世に伝えたい」としているだけに、今後はぜひ一般に向けた展示・公開の機会が増えることを期待したい。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事