人間が過去の記憶を都合悪く解釈しない理由 記憶力に自信がない?水分足りていますか?
2013年8月にエドモンズ博士らは、同様の実験を大人に対して行っています。平均年齢29歳の男女34人を対象に、見たものを素早く判断する認知試験を行いました。大人の場合は、子どもに比べ、多くの水を飲まないと効果はなかったものの、それでも500mlほど飲めば、判断スピードが14%ほど速まることがわかりました。
脳は身体のなかでも特に水分の多い臓器であることが知られています。総重量の70~80%が水です。こう考えると、体に症状が出るよりも先に、脳機能に悪影響が表れるのは当然だともいえます。
お茶やコーヒーで水分補給をすると、利尿作用からかえって水分を失うので要注意ですが、コーヒーの成分カフェインには、記憶力増強効果があるというデータもあります。
コーヒーは勉強「後」に飲んでも記憶の定着に効く
ジョンズ・ホプキンス大学のヤッサ博士らが2014年に発表した論文です。
たとえば皆さんは、東日本大震災の当日、2011年3月11日のランチに何を食べたでしょうか。覚えている人もいるでしょう。私は研究室の近くの食堂で蕎麦を食べました。
蕎麦を食べることは珍しいことではありません。普通ならば忘れてしまうような日常の一駒です。ところが、その後、午後2時46分にあの惨劇を経験することになります。
このように後に印象に残る出来事があると、時間をさかのぼって事前に経験した情報が、記憶として定着されます。「行動タギング」と呼ばれる現象です。
蕎麦を食べた時点では、脳はこの情報を覚えておくべきか否かは判断できません。その後に「事件」が生じて初めて、記憶として「定着すべし」と見なされるわけです。
こうした事実から、日常的な情報であっても、しばらくは脳内で「保留」され、記憶されるべきか否かの判定を待っていることがわかります。
記憶には少なくとも3つのステップがあります。
1.獲得(情報の仕入れ)
2.固定(情報の定着)
3.再生(情報の想起)
です。このどれが欠けても記憶は成立しません。逆に、どのプロセスを促進しても記憶は増強されます。東日本大震災のケースでは、普段なら忘れてしまう記憶が定着されたのですから、「固定」が促進されたことになります。
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