大型買収5000億円、捲土重来を期す東京海上

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大型買収5000億円、捲土重来を期す東京海上

国内最大の損保グループである東京海上ホールディングス(東京海上HD)が、米国の中堅損害保険グループのフィラデルフィア・コンソリデイティッド社(PHLY)を買収する。買収価格は約5000億円。日本の金融機関による海外企業のM&Aでは過去最大となる。買収資金は2000億~3000億円を手持ち資金で、残りを社債発行で補い、年内に買収を完了させる予定だ。

東京海上HDは今年3月に保険グループの英キルン社を950億円で買収し、欧州への橋頭堡を築いたばかり。今回の買収によって、同社にとっての悲願でもある「日米欧」の3極体制構築がさらに具体化する。

ナスダック市場に上場するPHLYは全米に47の拠点を持ち、50州のすべてで保険免許を取得している。自動車保険など個人向けの商品は扱わず、スポーツ関連や地域団体、学校、病院などに向けたニッチな商品に特化。それでも過去10年間の正味保険料収入の伸びは、米国保険業界の平均を上回っており、利益率も際立って高い。

東京海上HDの隅修三社長は、サブプライムや政府系住宅金融公社の経営危機の影響について、「調べたかぎりほとんどない」と財務の健全性を強調。両社の2008年度の業績予想を単純合算すると、東京海上HDの海外事業の正味収入保険料は約35%増の7400億円、当期の純粋な損益を表す修正利益は同95%増の620億円にまで拡大するという。

かつて買収で失敗

実は、同社にとって米国進出はこれが初めてではない。東京海上火災(当時)は1980年にヒューストン・ジェネラル保険グループ(HG)という保険会社を5500万ドル(当時の円換算で117億円)で買収したことがある。HGの扱う賠償責任保険は、当時の米国でも比較的競争が少なく、成長性が高いと期待されていた。だが、市場環境の悪化に加え、保険会社の生命線である保険引受業務を現地代理人任せにしたため、採算が悪化。結局は撤退を余儀なくされた苦い経験を持つ。

今回の買収は、「日本市場だけに固執していては将来がない」(同社幹部)との危機意識も背景にあるが、リベンジの意味合いも強い。はたして捲土重来はなるか。

(筑紫祐二 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済)

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