難破寸前「トランプ丸」が直面する次の試練 ロシア疑惑が消えない限り前に進めない

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6月8日、米議会の公聴会で証言をしたジム・コミー米連邦捜査局(FBI)前長官によると、トランプ大統領は、ロシア政府とのかかわりを否認していたマイケル・フリン前大統領補佐官に関するFBIによる捜査をやめさせようと試みた。が、コミー氏がこれを拒否したことが、「クビ」につながったと示唆した。

米国には全17の情報機関がある (これらは米国の5つの軍部から始まり、中央情報局=CIA、財務省などへと続けて設置されたものであり、国家情報長官により管轄されている)。そのすべてが、ロシアが2016年のアメリカ大統領選挙に大規模に干渉したとの見方に同調している。詳細が徐々に明らかになりつつあり、国内の法執行機関ならびに米国の諜報機関がトランプ大統領に対し、この問題に関して警告を発したことも明らかになった。

「魔女狩りの対象になっている」

新たに任命された元FBI長官のボブ・モラー特別検察官によりトランプ大統領の捜査が行われていることは明らかである。トランプ大統領自身も、自らが司法妨害罪で捜査されていることは認識しており、「魔女狩りの対象になっている」とツイート。一方、同大統領個人で新たに雇用した弁護士団の1人は18日、ニュース番組でモラー特別検察官の捜査は受けていないと発言したことから、ワシントンはまたもや混乱に陥っている。

トランプ大統領側近を囲む環境も厳しさを増している。まず、フリン前大統領補佐官が告発される可能性は極めて高い(トランプ大統領はこの期に及んでも、同氏を擁護しているが)。同氏をめぐっては、機密情報取り扱いの審査で虚偽説明をした可能性が取りざたされており、ロシア、トルコ、サウジアラビアとの関係についても明らかにしていなかったことがわかっている。

マイク・ポンペオCIA長官も困難な状況にある。同氏は多数の情報機関関係者がフリン氏に疑惑を抱いていたことを把握していた。だが、CIA高官がフリン氏に重要度の高い情報を与えるべきではないと警告していたにもかかわらず、ポンペオ長官はトランプ大統領に対して日々、情報説明を行っていた。

トランプ大統領の義理の息子であるジャレッド・クシュナー大統領上級顧問(中東政策担当)も、FBIの捜査対象になっており、同氏もまた、外部弁護士を雇用している。このほど、クシュナー上級顧問は、機密情報取り扱いの審査にて、ロシアに幅広い人脈があることを明示しておらず、虚偽の申告をしていた。

着任わずか5カ月でトランプ政権は政治的な窮地に追い込まれている。ロシア問題に関する調査結果が公開されないかぎり、重要な政策が前に進む可能性は低い。まともな政策論議ができない状況が続けば、トランプ政権だけでなく、米国全体に閉塞感が漂うことは避けられないだろう。

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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