難破寸前「トランプ丸」が直面する次の試練 ロシア疑惑が消えない限り前に進めない

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前述のとおり、共和党議員たちも現在の状況には危機感を抱いている。

米国内政策は課題が山積している。トランプ大統領は、8月の夏季休暇入り前に連邦債務の上限を引き上げるよう要請しているが、与野党協議が合意に達せず、上限引き上げができなければ、政府が機能不全に陥る可能性がある。米議会は予算を可決しなければならないが、トランプ大統領の提案では軍事を除くあらゆる領域で予算削減となっている。ホワイトハウスがあえて指名を行わないため、国務省が指名する上級職位の大部分はいまだ空白のままである。

また、医療制度改革は米国内でいま、最も議論されている問題であるが、トランプ大統領は複雑なシグナルを送っている。ポール・ライアン下院議長が率いる共和党右派は、政府があまりに肥大化しているとしており、低所得者層はより自主的に自らの命を守るべきだと考えている。が、共和党穏健派はこの考え方には賛同しておらず、社会的セーフティネットが保証される必要があると主張している。

公約は結局、1つも達成できていない

ライアン下院議員が主導する医療制度の改変を、米議会が拒絶することはほぼ確実だろう。が、これにより、バラク・オバマ前大統領が導入したオバマケアを廃止するというトランプ大統領による選挙公約は達成できなかったことになる。これは、トランプ大統領だけでなく、共和党にとっても大失態となる。

税制改革の問題もある。トランプ大統領は、法人及び富裕層に課す税を劇的に減じることを約束したが、これは年間3~4%の経済成長という非現実的な目標を前提としたものだ。現状、保守派、リベラル派の経済学者の多くが、この高い目標を達成できるとは考えていない。また、法人税と富裕層に対する大幅な減税が、経済成長を促すという点についても非現実的であるという見解で一致している。

米国とメキシコの間に「壁」を建設するという壮大な計画はすでに風前の灯火だ。トランプ大統領独自の予算案には財源が含まれていない。メキシコでコカ・コーラの取締役を務めるビセンテ・フォックス・ケサーダ・元メキシコ大統領は、250億ドルの壁を25ドルのはしごで越えることができる、としてトランプ大統領を嘲笑している。

ロシア問題もくすぶっている。2016年の米大統領選にロシアが大きく干渉した疑いを持たれる中、トランプ大統領の問題は、この調査に関心を持たないことではなく、ないがしろにしてしまったことである。

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