500円ピザ外食チェーンの破産は必然だった 経営は「限界利益」と「固定費」で説明できる

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よく、「人件費は固定費だ」という人がいますが、これはやや注意が必要です。正社員の給料は、たとえ会社の売り上げが落ちても払わないといけませんから確かに固定費ですが、たとえば建設業で外注先の作業員に支払う給料は変動費です。建設現場という「売り上げ」が上がって初めて生じる費用だからです。

そして、限界利益とは、売上高から変動費を引いて残った利益のことです。この利益が、黙っていても一定額かかってしまう固定費を賄う原資となります。賄えれば黒字、賄えなければ赤字です。

このように理屈はいたって簡単なのですが、多くの人は“限界”利益というイメージしにくい用語のせいでうまく理解ができません。ですので、筆者はセミナーなどでは、「どうしてもわからなければ“粗利”と言い換えていいですよ」とお伝えしています。

なお、業種別の限界利益率と固定費の平均値は、「TKC経営指標(BAST)」というインターネットサイトで簡単に調べることができます。

「500円ピザ」失敗のメカニズム

遠藤商事のケースに当てはめて考えてみましょう。前述のTKC経営指標の中から「他に分類されない飲食店」という業種項目を見ると、限界利益率は64.8%、平均固定費から計算できる固定費率は61.9%です。これが、飲食店ビジネスを行う上で売上高に占める限界利益と固定費の“相場”と考えることができます。

遠藤商事の年売上高は25億円、店舗数は直営・フランチャイズを合わせて74店だったということですから、1店当たりの売上高は約3400万円です(もちろん直営とフランチャイズで収益計上の基準が違ってくる可能性があるため、あくまで便宜的な計算です)。ここで間違えてはいけないのは、固定費が3400万円×61.9%≒2105万円、とはならないことです。

固定費は売り上げの多寡に関係なくかかる費用ですから、この場合は同業で経営が安定している他企業の数字を当てはめる方が適切です。そこで、外食の代表選手である日本マクドナルドホールディングス(以下マクドナルド)、モスフードサービス(以下モス)、松屋フーズ(以下松屋)の数字を、各社の直近の決算情報から拾ってみます。

マクドナルドの前期年間売上高約2266億円を、前年度末の総店舗数2909店で単純に割ると、1店当たりの売上高はおよそ7800万円となります。これに固定費率61.9%を掛け合わせると、1店当たりの固定費は約4828万円と計算できます。

モスの前期年間売上高約710億円を、総店舗数1741店で割ると、1店当たりの売上高はおよそ4078万円となります。これに固定費率61.9%を掛けると1店当たりの固定費は約2524万円となります。マクドナルドより固定費が低い理由は、総じてマクドナルドより営業時間が短いことや、店舗のほとんどがフランチャイズ店(国内総店舗数に占めるフランチャイズ店の割合は約96%。同社ホームページより筆者計算)で、人件費や営業費などの経費を加盟店に転嫁できることなどが考えられます。ちなみに、マクドナルドのフランチャイズ率は約68%で、遠藤商事(約64%)と近い割合です。

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