郵政株は安くない?総会で飛び出した迷回答 巨額損失4000億円でも株主総会は平穏だった

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この質問に対し原口亮介専務執行役員は、「いろいろな報道はあるが、日本郵政として(野村不動産の買収を)検討していることは一切触れていない。現時点で検討している事実はない」と一蹴。不動産の有効活用は今後の柱として育てたいとの方針は述べたが、具体的な方向性の言及は避けた。

株主からは株価に対する質問も出た。「日経平均株価が上昇する中で、日本郵政株は右肩下がり。業績回復も重要だが、株価が上昇するような具体的な施策を教えて欲しい」。

日経平均株価が2万円を回復する中、日本郵政株は1300円台と低空飛行が続いている(21日終値1378円)。これは売り出し価格1400円(上場時の2015年11月4日の初値は1631円)を下回る水準だ。

「株価はライバルよりマシ」

長門正貢社長は現状の株価について、付け加えて説明した(写真は5月15日の決算説明会。記者撮影)

原口専務は「株価水準については謙虚に受け止めたい」とし、3事業(郵便・銀行・保険)を中心に企業価値向上に全力で取り組む方針を示した。

郵便ではネット通販の荷物の取り込み、金融では投信などの手数料ビジネスの強化などを挙げたものの、株価上昇につながる施策としてはインパクトに欠いた。

議長役の長門社長も補足という形で発言した。「上場時の日経平均株価は1万8926円だった。(直近の)6月21日は2万0138円まで上昇しており、それに比べると株価は下がっている」と認めた。そのうえで「郵政グループだけ株価が上がっていない論調というのもあるが、そうではない」と反論した。

「日本郵政の収益は8割以上がゆうちょ銀行、2割弱がかんぽ生命保険だ。株価もゆうちょ銀行が8、かんぽ生命が2の合成比率で出来ている」と独自の理論を展開。「変化率でみると、ゆうちょ銀行株は上場してから下落しているが、メガバンク株と比べると下がっていない。かんぽ生命も生保のライバル企業と比べて悪くはない」との見解を示した。

10時に始まった総会は11時半過ぎに終わった。荒れる場面はなかったが、閉会後にある株主は「株価が上がる気がしない」と漏らした。梅雨の晴れ間にもかかわらず出席株主数は838人と、昨年から356人減少した(昨年の開催地はさいたまスーパーアリーナ)。既存株主の熱量は明らかに低下している。株価も低調な中で、年内にも予定される第二次売り出しによる需給悪化の懸念は強まる一方だ。

鈴木 良英 東洋経済 記者

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すずき よしひで / Yoshihide Suzuki

『週刊東洋経済』編集部記者

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