三越伊勢丹、結局封印された「社長辞任」理由 株主総会に大西前社長が出席したが・・・

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ただ会社側の説明に納得した株主がどれほどいたか。ある30代の女性株主は「辞任は本当に本人からの申し出だったのか。もっとはっきりさせるべきだった」と語る。

リストラ策には言及せず

同社の目下最大の課題は、低い収益性をどう改善していくかだ。2016年度の営業利益率はわずか1.9%。J.フロント リテイリングの4%、高島屋の3.7%と比べ見劣りする。その主因が重い人件費だ。「他社と比べて人件費率が高い。特に中間管理職が多いことが課題」(杉江社長)。

新経営陣で迎えた株主総会は波乱なく終わった(記者撮影)

しかし今回の総会で、人件費抑制策に関する会社側からの説明はなかった。あったのは、株主からの質問に対し、杉江社長が「従来からある早期退職金制度を活用する」と、これまでどおりの回答だけだった。

また伊勢丹松戸店や府中店、広島三越、松山三越など不振の地方店にどう対処するかについても、具体策は一切出なかった。

元伊勢丹の従業員だったという70代の男性株主は、「経営陣に危機感が足りない。現在の百貨店はビジネスモデルの転換が求められている。その危機感がないと、トップが変わってもダメだ」と言う。

会長の石塚氏は今回の総会をもって退任し、特別顧問に就任する。同氏は日本経済団体連合会の副会長を務めているが、それを継続するための措置であることを会社側は明言した。

ただ、これも顧問・相談役制度に関する株主からの質問に対して答えたもの。全般的に同社の”受け身”の姿勢が目立つ総会だったといえそうだ。

議事がすべて済み、総会の最後に大西前社長が挨拶に立った。大西氏は辞任騒動以降、記者会見を開いていない。公の場で発言する機会をこの最後の総会で得たことになる。

「厳しい環境の中、百貨店のビジネスモデルの変革や事業開発に取り組んできました。百貨店は人を起点とした産業。人材育成には自分なりに懸命に取り組んだつもりです」。

大西氏は百貨店の社長を務めた6年をそう総括した。挨拶は2分ほどの簡単なもの。そして結局、自らが辞任した本当の理由を語ることはなかった。

菊地 悠人 東洋経済 記者

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きくち ゆうと / Yuto Kikuchi

早稲田大学卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者を経て2017年10月から東洋経済オンライン編集部。2020年7月よりIT・ゲーム業界の担当記者に。

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