トヨタ「マークX」の消滅がささやかれる理由 一斉を風靡したハイソカーはどこへ行く

拡大
縮小

マークXの現行モデルは、2009年に登場し、2012年と2016年に大がかりなマイナーチェンジを実施している。最新モデルに少し乗ってみたのだが、内外装デザインだけでなく、走りの味付けにまで手を加えていて、力の入りようがうかがえた。

中立付近のやや緩いステアリングなど、いささか最新モデルとの違いは見受けられたものの、ドライブフィール全般の印象は上々。乗り心地や静粛性など快適性も高い。ただし、クラウンにはすでにある直噴ターボエンジンの設定はなく、全車V6であり、先進安全装備の設定や車内のどこにもUSB端子がないことなど、負い目を感じたのも否めない。

そんな中でも、注目すべき事実もある。マークXに、2012年秋に設定された「G‘s」というスポーティなグレードが、けっこう売れたのだという。2012年10月~2016年11月までで約5050台。同じ期間のマークX全体の販売台数が約4万7200台なので、比率は10%を超えている。マークXは、G’sのようなキャラクターを好む層に受ける要素を持ち合わせているわけだ。

それもあってか、2016年11月にビッグマイナーチェンジを実施し、「RDS」という新しいスポーティグレードを設定し、心機一転を図った。かろうじて直後の販売はやや回復したものので、それほど改善するわけでもなく、生産終了がささやかれ始めたというワケだ。

トヨタ内では、マークXを残すかどうかという決断を迫られた中で、苦渋の選択となるはず。ただ、マークXがカムリに統合されると、これまでマークⅡ~マークXに乗ってきた、あるいは販売サイドで扱ってきた人にとっても、どうしてもカムリは格下という印象はぬぐえないはず。

新型カムリは非常に期待できるものである

ただし、まもなく新型が登場するカムリは、プラットフォームだけでなく、パワートレインにも、トヨタの車づくりの構造改革「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」の考え方を採り入れて、全面的に刷新して登場するので、内容的には非常に期待できるものであることには違いない。

FRであるからこそマークⅡ~マークXを支持してきた層も少なくないことと思うが、クラウンで若返りを図ったトヨタの戦略は功を奏しており、次期クラウンでもこの路線を踏襲するに違いない。やや話がそれるが、マークXの代替需要の受け皿として、アスリートをさらに若返らせたモデルをつくるという手法も考えられる。そうなると、クラウンにも「G‘s」の後継となる「GR」がラインナップされる可能性は十分にありうる話だ。

マークXはマイナーチェンジして間もないこともあり、当面は現状を維持して販売されるだろう。思い入れのある人も大勢いるであろう、マークⅡの面影を残すマークXの明るい情報が聞こえてこないのは残念だが、これも時代の変化を象徴している。

岡本 幸一郎 モータージャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

おかもと こういちろう / Koichiro Okamoto

1968年、富山県生まれ。大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の編集記者を経て、フリーランスのモータージャーナリストとして独立。軽自動車から高級輸入車まで、国内外のカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでも25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに有益な情報を発信することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT