(このひとに5つの質問)渡辺捷昭 トヨタ自動車社長

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(このひとに5つの質問)渡辺捷昭 トヨタ自動車社長

今年中には米GMを抜き、販売世界一が目前のトヨタ。2009年に掲げた目標は年1040万台。前人未踏の大台を前にトップは何を語るのか。都内で行われた経営説明会の詳報。(『週刊東洋経済』9月15日号より)

1000万台の先は未定だ 傲慢や驕りは戒める

1. 2009年に1040万台を達成して以降の目標は。トップランナーとしての難しさも出てきますが。

その後はまだ固めていない。ただ、BRICsを中心に世界の自動車保有台数は確実に伸びる。05年の8億5000万台から10年には10億台になるだろう。そのうえで量だけでなく、質の向上を目指す。「環境」「エネルギー」「安全」は自動車の生命線であり、わくわくするような車づくりをしたい。

マネジメントでも驕りや傲慢を戒め、高い志にチャレンジする集団でなければならない。地域軸で見れば課題はたくさんあるし、質・量・コストのレベルを上げていく。巨大化するほど、変えるべきは変え、守るべきものは守る。

2. VI(バリュー・イノベーション活動)など原価低減の効果は出ていますか。

原価低減には、工場での取り組みだけでなく、仕入先と一体で原価を下げるなど、いろいろな側面がある。VI活動でかなり削っており、金額では年間3000億円くらいだ。設計段階から複数の半導体チップを一つに統合したりと、いい設計をすれば生産もしやすく、製造コストが下がる。仕入先とも果実を分け合っている。

3. 業務提携したいすゞ自動車と日野自動車には大株主として経営統合を考えていますか。

可能性が1%か100%かというなら、限りなく下のほうだし、現実に統合は考えていない。われわれがうんぬんすることもない。

4. 02年には「世界シェア15%」を掲げていました。現在12~13%ですが、10年代初頭に達成するのではないですか。また、08~09年にかけて工場の新設が少ないのでは。

シェアはあくまで結果であり、追求する気持ちはまったくない。確かに15%には近づいたが、質の向上に対して、台数のシェアが結びついていけばいいという認識だ。

生産体制については、すでに操業を開始している米テキサスやタイ、中国・天津の第3工場、SIA(生産委託した富士重工業の米国工場)が、年間を通してまだフル稼働していない。新しい拠点としてロシアやカナダ第2、中国ももう1カ所やらないといけないし、市場とわれわれの供給の見方はリンクしている。

5. 米国経済はサブプライムローン問題の影響で、市場が鈍化しています。

米国市場はほかにも原油価格の問題があって、昨年よりも少しレベルを下回ると思う。今年は市場のレベルより少し上のところを頑張りたい。来年以降は今年並みプラスアルファでいい。サブプライムローンについては注意深く見守っているが、基本的にはそんなに悲観していない。

(撮影:今井康一)

わたなべ・かつあき
1942年生まれ。64年慶応大学卒業後、トヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)入社。調達部門出身で元町工場長などを担当。92年取締役。97年常務、99年専務、01年副社長を経て、05年6月社長就任。

大野 和幸 東洋経済 記者

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おおの かずゆき / Kazuyuki Ohno

ITや金融、自動車、エネルギーなどの業界を担当し、関連記事を執筆。資産運用や相続、年金、介護など高齢化社会に関するテーマでも、広く編集を手掛ける。大野和幸(X)

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