海外投資家が日本の「小型株」を狙う理由 面白味のない相場だが、日本株はまだ割安

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とすると、国内株価については、それなりに明るい緩やかな上昇基調が持続するのではないだろうか。急騰もせず、急落もせず、ぼちぼち強含んでいく、といったあんばいだ。株価上昇を支えるような、企業収益の増益の確度は高い。多くの企業が1ドル=105~110円を想定レートとしており、現在の円相場が問題だとは考えにくい。

株価と企業収益を比較した割高・割安の判断では、時系列的にみて、TOPIX(東証1部の時価総額を指数化したもの)の予想PER(株価収益率)は、まだ若干とはいえ割安なゾーンに位置している。なお、このところ、日米株価のPERを比較して、日本が安いとか、いやそうではない、という議論を良く目にするが、利益の長期成長率も金利水準も異なる2つの国の間で、単純にPERの数値だけを比べて議論するのは、割高という結論だろうと割安という結論だろうと、論理的だとは思い難い。

こうした「増益と投資尺度上、割安だ」という極めてオーソドックスな背景が、面白味こそないかもしれないが、全般的に日本株を支え、7~9月頃にかけて、日経平均株価の上昇をもたらすものと予想している。そうした流れの中で、今週の日経平均株価の予想レンジを、1万9850~2万0300円と見込む。

小型株優位の展開が継続か

このところ、小型株(時価総額が小さい株)が、大型株に比べて相対的に優位に推移する、という展開が傾向的に続いている。

これは、少し前まで日経平均がなかなか2万円を超えないなど、全般的にこう着感が強かったので、消去法的に個別の小型株物色が進んだ、という面があっただろう。

しかしそれだけではなく、特に海外投資家が、小型株を拾っているとの観測が広がっている。これは、特色がある小型株を発掘しよう、という動機もあるが、小型株は企業規模が小さく独自の市場で業務を行なっているものが多いため、マクロ経済全般の動きとその企業の収益動向の関連性が薄い(逆にグローバルな大企業は、世界経済全般の影響を大きく受ける)。このため、大型株だけではなく、小型株も合わせて保有した方が、リスク分散になる、との議論も、海外投資家の間であるようだ。

それを踏まえると、全体相場がこう着を脱しても、小型株優位の展開は、傾向としては続くように予想される。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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