能町みね子さんが始めた「夫婦(仮)」の真相 ゲイライター・サムソン高橋さんとの新生活
能:高橋さんが、あるゲイ差別事件のことを記事で書いていたんです。真面目に書いても、普段のように毒を吐いていても読ませる文章、大好きだった。「偽装結婚の相手として最高」って書いて。そうしたら「お互い道に迷ったらぜひ」って返してくれた。そこで「とりあえずお見合い(サシ飲み)しましょう」と。
サ:初デートは(弁護士の)宇都宮健児さんの焼酎トークライブ。麦焼酎5杯飲んだ宇都宮さんが話す(笑)。
能:ご飯食べて雨の中、相合い傘で帰ったね。私もわりと人見知りなので、「この人本気で言ってくれているのかな」って。
サ:その時、ノリで「結婚前提でお付き合いしましょう」。
能:私も半分ノリだったけど、「やったー」。それで、いつかここ(サムソン家)に行きたいとも言ったんだよね。
――サムソンさんの住まいは「ネギぶら下げて買い物中に衝動買いした」3階建ての一軒家だ。築50年近い家をリフォームしながら暮らしている。
サ:それから「週イチ」ぐらいでお泊まりしに来るように。
能:ここで仕事もしたり。料理を作ってもらうんです。私は家事が何もかもできないので。
サ:あれだけ相撲に関してはキッチリしているのにね。
恋愛はないほうがいい
MtFの能町さんと、性的指向は男性のサムソンさんとの「結婚」を前提とした関係といわれて、すとんと腑に落ちる人はそう多くないだろう。
能:こういう例って、(ゲイの夫がいる作家の)中村うさぎさんぐらい。ここで結婚してみて、人を戸惑わせたい、みたいな気持ちはありますね。
サ:ギョッとさせたい。
能:そう。困った反応を見てみたい。財産や相続などの面で法的なメリットが得られる、というのもあるけど、それ自体が重要かというと……。
サ:それより、結婚について考えると、自分の健康に気をつけないといけないみたいな、根本的なことに行きつくよね。
能:誰かと一緒に暮らすことで、自分の生活もしっかりする。家族とまで言えるかわからないけど、一緒に暮らして落ち着く場所を求めていたんです。
サ:そもそも、結婚に乗り気になったのは、家族を除いて誰かと暮らしたことがないから。
能:私もないんですよ。
サ:だから、実験。