ジャカルタの鉄道は、駅も「日本」を見習った 電車だけでない、設備やグッズ販売も日本流

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そうした中、一部のKCJ駅には、出口にバス停までのルートや周辺の主要な建物・観光スポットへの行き方がわかる地図を掲げるようになった。地図を見る習慣があまり普及していないインドネシアで、「駅からマップ」がどうインパクトを与えるかは未知数だが、新たな日本流の取り組みとして評価したい。

さらに、駅のプラットホームや改札口へのルートなどに、目の不自由な人向けの黄色い点字ブロックが設置されるようになった。もっとも、駅によっては通路の足場そのものが悪く、バリアフリーへの取り組みまでにはまだ先が長いという状況もあるものの、ジュアンダ駅をはじめ、都心の駅から徐々に取り付けが始まっている。

前田氏は、「日本風設備の導入を『インドネシアでは時期尚早』と決め付け、彼らのアイデアややる気を潰してしまうのはよいことだと思わない」と指摘。「彼らがやってみたいということを積極的に実践させ、結果を出すことで成功体験が積み上がる。その結果、安全安定輸送の達成という鉄道事業者にとっての『メインのビジネス』にもよい結果をもたらす」と話している。

日本製の「FeliCa」、ジャカルタで利用範囲拡大も

KCJでは2015年、ソニー製の非接触式ICカード(電子マネー)「フェリカ(FeliCa)」を導入した。これは、スイカをはじめとする日本の鉄道事業者が発行するカードと同じ方式のもので、スイカなどと同じように長期にわたって繰り返し使えることができる。一方でKCJは、フェリカ導入に先立つ2013年から「ISO/IEC 14443 TypeA」と呼ばれる方式のICカードを使っているが、通信速度が遅いうえ、初回購入から7日間しか使えないという欠点があり、通勤・通学などに常用するには面倒だ。

左側がコンビニでも使えるようになったKCJ発行のFeliCa。右側は乗るごとに毎回チャージする手間を伴うICチケット(筆者撮影)

KCJ発行のフェリカはこのほど、インドネシアのコンビニ大手「アルファマート」での支払いにも使えるようになった。これは、「駅ナカビジネスを推し進めるJR東日本の各駅にある店舗で電子マネー支払いができるアイデアや仕組みを取り入れたもの(前田氏)」だという。

電子マネー利用範囲の広がりはコンビニだけではない。ジャカルタでは近く、KCJとトランスジャカルタだけでなく、市内を走る公共交通機関で使われる運賃決済システムを統合した電子マネーシステム「コネクションカード」が導入される運びだ。これは、運輸省傘下のジャカルタ首都圏交通機構(BPTJ)を通じて発行されるもの。現在建設が進められている3つの新規鉄道(空港鉄道、市街地を縦断するジャカルタ都市鉄道、中心地と東郊外をつなぐ軽量軌道交通)でも使用できるようになる見込みで、日本と同様、カードが1枚で各交通機関をシームレスに乗れるようになる。

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