ジャカルタの鉄道は、駅も「日本」を見習った 電車だけでない、設備やグッズ販売も日本流

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スタッフたちの「思いつき」で鉄道ファン向けのグッズショップも開設された。場所はKCJの本社があるジャカルタ中心部のジュアンダ駅の一角。今年1月末に開かれたこのお店は「Cコーナー」と名付けられた。つい数年前まで、日常の運行さえおぼつかなかったKCJだが、一気にファン層の開拓まで着手できるレベルまで進化。同社が急速に発展していることを示す一例といえるだろう。

前田氏は、KCJのグッズショップが生まれた理由として「JR東日本からの出張者がジャカルタまでお土産として持ってくる『スイカ(Suica)』のペンギングッズが影響を与えたようだ」としたうえで、現地スタッフたちが「われわれもこんなようなグッズを作って販売しようと思いついた」と話す。

ショップでのいちばんの売れ筋商品はTシャツ。また、コンパクトに持ち運べる折り畳み傘も、インドネシアでは珍しいとあって意外と売れているそうだ。

ジャカルタ中心部・ジュアンダ駅にあるKCJのグッズショップ「Cコーナー」(高木聡氏撮影)

KCJのグッズショップには205系をはじめ東京メトロ千代田線を走っていた6000系、東西線の05系など、KCJで現在走っている車両の先頭車形状をモチーフにしたクッションをはじめ、キーホルダー、Tシャツなどがそろっている。これらのグッズはインドネシアの鉄道ファンだけでなく、日本人マニアの注目も集めている。今後KCJに日本のような「ゆるキャラ」や「アニメキャラマスコット」などが登場したら、グッズの販売がさらに伸びるのかもしれない。

駅の設備や案内板も拡充

ジャカルタではこれまで、公共交通機関への信頼度が高くなく、かつてはオートバイ、いまは自動車による「ドア・ツー・ドア(door to door)」の移動を好む人が極めて多い。そのうえ、インドネシアは赤道近くにあって、1年を通じて暑いことから、道路を歩く習慣もあまりない。ジャカルタでは自家用車の数が増えすぎた結果、「市内にある車の面積の総和」が「道路面積の総和」よりも大きい、という異常事態になっているとさえ言われる。

しかし、前田氏らの努力もあって電車の安定運行がある程度担保されるようになって以来、ジャカルタ周辺のある街から市内に向かう足としてKCJを利用する人が増えているほか、KCJから「トランスジャカルタ」に乗り継ぐ通勤客が着実に伸びている。

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