選びきれない、でも自分で決めたい消費者 なぜ、日本人はモノを買わないのか?【最終回】

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「いいね!」の「見える化」で、売上げが3割増しに

不特定多数の評価情報の参照は、情報の一覧性、比較性に優れたインターネットで行われることが多いが、こうした動きをリアル店舗に取り入れて成功している例もある。

無印良品では2012年11月、「ニット・ライク・コレクション」で、凸版印刷が開発したO2Oプロモーションシステムである『いいね!』カウンターを使った試みを実施した。スタッフによるニットコーディネイトをWebと東京・有楽町にある旗艦店で展示し、お気に入りのコーディネイトをフェイスブック経由で一般の消費者参加で選んでもらい、そのカウント数をリアルタイムに店頭で表示した。
新しいO2Oの試みへの興味とともに、SNS上、そしてリアル店舗で人気の着こなし例を「いいね!」の数で実感することによって消費者の購買意欲は刺激され、コーディネイトに使われたニット製品は前年同期比33%増と大きく売上げを伸ばしたという。

日本人はランキング・コンシャスだといわれ、従来から広告や店舗POPなどでは「人気No.1!」「売れ筋ランキング上位!」などの文字が躍っていた。情報のあまりの多さに疲労し、情報収集の意欲が減退しがちな現代においても、こうしたユーザー評価を参照したいとする意識は重視される傾向があることは興味深い。

むしろ選択肢や情報があふれている現代だからこそ、情報収集の効率性を高め、選択肢のスクリーニングを行ってくれるものとして、ユーザー評価に対する期待が高まっているということだろう。

消費者は「間違いのない」ブランドを欲しがっている

選択肢のスクリーニングを求める消費者の意識は、ブランドに対する価値観にまで影響を与えている。

「シャネラー」、「グッチャー」、「いつかはクラウン」――。「記号消費」という言葉があるように、かつて、ブランドは所有者にステイタス感を与えるものであった。誰もが右肩上がりの生活設計をしていた高度経済成長期には、「ここまで行ったらこのブランドを買おう」というように、消費者はある種の羨望感を持った消費をしていた。しかし今、ブランドにステイタスを求めるこうした意識は薄らぎつつある。

野村総合研究所が2013年春に行った調査で、関東一都6県の20代から50代までの男女に対して、「あなたにとってファッションブランドとは何か」という問いを投げかけたところ、最も回答が多かったのは「『このブランドなら品質に間違いがない』など、品質保証をしてくれるもの」で34%、2番目が「自分のテイストやライフスタイルなどに応じてファッションを選ぶ際の参考となるもの」で30%となった。

次ページ成功のカギは、ブランドの持つ意味を再定義すること
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