35歳で億万長者、米「ハンバーガー姫」の素顔 イン・アンド・アウト・バーガー創業夫妻の孫

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

4度目の結婚は、やはりイン・アンド・アウトの社員で、その夫との間に4人目の子供が生まれた。

たくましく男性遍歴を繰り返す華やかな存在のように見えるが、リンジーの自分に対する評価は決して高くはなかったようだ。1度目の離婚後、薬物中毒に陥った際には、自分は父親と同じような運命をたどって短命に終わるのではないかと恐れたという。2度目の離婚後は、自分の人生は失敗だと思わざるをえなかった。そのためか、金目当てで結婚した3番目の夫が隠れて浮気をしていたときも、自分がこんな目に遭うのは当然の罰とすら考えていたようだ。この夫には精神虐待など、ひどい扱いを受けたという。

リンジー指揮の下で急速に成長

さて、そうして波乱の人生を送る間も、イン・アンド・アウト・バーガーでの彼女の責任はどんどん大きくなっていった。2006年には創業者だった祖母のエスターが逝去し、2010年には社長に就任。少し前まではカリフォルニア州を中心に数州の西海岸地域でのみ展開していたチェーンは、リンジーの指揮の下、オレゴン州やテキサス州にも拡大。売り上げは57%伸び、現在の年商は8億7000万ドルと見られている。

不安定で孤独を感じていたリンジーを救ったのは、キリスト教徒としての目覚めだ。神を信じることで心のすき間が埋まり、1人でいることも恐れなくなったと、彼女は語っている。自分と自分の使命に対する意識も改めた。これだけの波乱を経て、ようやくイン・アンド・アウト・バーガーの経営者としての準備が整ったのだ。

やや高めだけれども、新鮮で安全なファストフードハンバーガーであるイン・アンド・アウトは、景気低迷時でも順調に売り上げを伸ばしていたことで知られる。安くても惨めな気持ちにさせないファストフードは、まさに人々が求めていたものなのだ。そこには、儲けを上げるだけではなく、いい食事を提供したいという創業以来の同社の信念がこもっていると言ってもいいだろう。

イン・アンド・アウト・バーガーは決して他社に売却もしないし、IPOとして公開企業にする気もないと、リンジーは語っている。そんなことをするのはカネが目的だからだろうが、私はそうでないと彼女は言う。波瀾万丈の人生を送ってきたリンジーが率いるイン・アンド・アウト・バーガーは今後どう発展していくのだろうか。ちなみに、4度目の結婚を果たしたリンジーの結婚は今も続いており、お城のような豪邸に住んでいるという。

瀧口 範子 ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

たきぐち のりこ / Noriko Takiguchi

フリーランスの編集者・ジャーナリスト。シリコンバレー在住。テクノロジー、ビジネス、政治、文化、社会一般に関する記事を新聞、雑誌に幅広く寄稿する。著書に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか? 世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』『行動主義:レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家:伊東豊雄・観察記』、訳書に『ソフトウェアの達人たち:認知科学からのアプローチ』(テリー・ウィノグラード編著)、『独裁体制から民主主義へ:権力に対抗するための教科書』(ジーン・シャープ著)などがある。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事