巨人グーグルが生み出した「最強AI」の全貌

日本にも上陸、グーグル版Siriの実力とは?

より複雑な処理を実行できるよう、2015年には「テンサーフロー」という機械学習システム構築ツールも公開された。このツールを使った有名な例が静岡県のキュウリ農家だ。キュウリを長さや太さ、質感などで9等級に分ける作業を自動化すべく、画像認識による選別システムをテンサーフローで作った。

より多くの人の手にAIを

日本でテンサーフローの開発者コミュニティを運営する、ブレインパッドの下田倫大・基盤開発部長は「コミュニティが広がれば、サービスの進化が速くなる。研究論文が増えれば、技術の発展にも寄与する」と解説する。利用者が増えれば、データ量や利用時間に応じてグーグルのクラウド事業の収入増にもつながり、まさにウィン・ウィンの関係にある。

グーグルのクラウドを利用すれば、誰でも簡単に機械学習を活用できる

多くの人がグーグルのAIを活用すればデータセンターへの負荷は大きくなるため、処理能力を高めることが必須だ。グーグルは高速で消費電力の低いAI用半導体、「TPU(テンサー・プロセッシング・ユニット)」を独自に開発した。

昨年初公開された第1世代に続き、今回のI/Oでは第2世代が発表された。

機械学習は大量のデータを読み込ませてモデルを作る「学習」と、そのモデルを基にデータを処理する「推論」の2段階に分かれる。学習のほうが、はるかに多くの計算能力と処理時間を必要とする。第1世代のTPUは推論に特化していたが、第2世代は学習段階でも使えるものに進化した。

現在、グーグルの稼ぎ頭は広告事業だ。この収入を元手に機械学習技術やクラウドへの投資を行っている。世界各地にあまねくデータセンターを持ち、自前のファイバー網でつなぐなど、クラウドへの投資は並大抵の規模ではない。背景には「クラウドは機械学習に最も適したものでなければならない」(ピチャイCEO)という考えがある。

投資も徐々に実を結び始めている。クラウド事業を含む非広告収入はここ数年で急伸。2016年には初めてグーグル全社売上高の1割を超えた。

当記事は「週刊東洋経済」6月3日号<5月29日発売>からの転載記事です

現在、法人向けクラウドでは米アマゾン ウェブ サービス(AWS)に先行されている。だが、クラウド部門を率いるダイアン・グリーン氏はこの4月、米メディアに対し、独自の機械学習技術をテコに「2022年までにAWSを追い抜く」と自信を見せた。

グーグルは技術のオープン化で世界中の人々を巻き込み、巨大な「AI経済圏」を築こうとしている。壮大な計画はまだ始まったばかりだ。

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