iPhoneが変える!? 波乱の携帯ビジネス ついに日本に上陸

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新アイフォーンでは、端末価格を199ドル(米国)へ値下げした。これによりアップルの利益が減ってしまうのかといえば、そうではない。米調査会社アイサプライの調べによると端末販売の際、1台ごとに300ドルの奨励金(助成金)をアップルへ支払う。実質的な小売価格は499ドルであり、値下げにはなっていないのだ。同社の試算だとハードウエア部品代と加工費の合計が約174ドルであり、かなり高い利益率だ。

この奨励金モデルは、ソフトバンクが割賦販売モデルで採用している特別割引とそっくりだ。ソフトバンク幹部は「アップルは日本の携帯ビジネスモデルのことを詳細まで把握していた」という。「新しいプラットフォームや機器を出すときに、安く売ってスタートダッシュをかけるのは当たり前のこと」(増野大作・野村証券金融経済研究所主席研究員)。確かに、奨励金モデルは、ユーザーのエントリーコストが安くなるため、飛びつきやすい。アップルの戦略はピタリとはまったと言えるだろう。

端末価格を下げることで普及の後押しにはなるが、一方のキャリアにとっては売れば売るほど負担になる。そのため、アップルはレベニューシェアの負担を軽減し、長期的にはキャリアのメリットが出るビジネスモデルを設計しているようだ。

その分、アップルには新しい利益源が付け加わっている。一つがアプリケーションソフトの販売手数料だ。アップルは3月にアイフォーン用のソフトウエア開発キットを無償公開。アイフォーン向けのソフトを誰でも自由に開発できるようにした。ただし開発したソフトを販売する場合には、iTunesストアに設けた「App(アップ)ストア」から売らなければならない。この際、アップルは販売価格の3割を流通手数料として得る。アップストアからのダウンロードは7月10日の開設から最初の4日間で1000万件を突破しており、これが大きな利益源になることは間違いない。

さらに、マイクロソフトのエクスチェンジサーバーとの連係機能を持たせ、個人向けに新規メールやスケジュールの更新を定期的に配信するプッシュサービス「モバイル・ミー」も開始。これは年額9800円。サーバー運営などそれなりの経費もかかるが、こちらもまた新しい利益源に育っていくはずだ。

狙うはauとドコモの高単価顧客

アップルのビジネスモデルは実にわかりやすい。一方、ソフトバンクはどのように稼いでいくのか。

月額通信料体系を見ると、基本使用料980円のホワイトプランにインターネット接続基本料の315円、パケット定額フル5985円への加入が必須となっており、7280円以上のARPU(1契約当たり月額収入)を確保できる。

通信大手3社で比較すると、ソフトバンクのARPUはいちばん低い。2台目需要や、低料金プランにひかれた加入者が多いためだ。同社の07年度第4四半期のARPUは4310円で、内訳は音声2710円、データ1600円だ。一方、アイフォーンユーザーから得られるデータ料金は5985円となり、現在のデータARPUの4倍近くに相当する。

孫社長は「端末代金と販売店への手数料を払うので、目先は売れば売るほど逆ザヤ。しかし通信料収入で取り返せる」と言う。「今回の最大のポイントは、アイフォーンが差別化商品ということ。他社さんをやめてでも移りたいというお客さんを確保できるのではないかと思っている。そういう方々はARPUも高く、われわれの収益は成り立つ。データ通信量は多くなるが、ユーザー数が増えればネットワークのスケールメリットも出る」(孫社長)。

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