日本企業の格安スマホも実は「中華スマホ」だ 自社開発ベンチャーが次々登場しているが…

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こうした動きを象徴するのが、日本でスマホの周辺機器を手掛けるメーカー、トリニティである。同社はプラスワンよりも規模が小さい企業だが、2016年より独自のスマホ「NuAns NEO」シリーズを提供している。コアとなるスマホの本体部分に、さまざまな素材を採用した専用のカバーを装着することで、ファッション性の高いカスタマイズができるスマホだ。

トリニティは独自性を追求したスマートフォン提供のためODMを活用。5月発売予定の「NuAns NEO[Reloaded]」は、SIMフリー専業メーカーとして初めておサイフケータイにも対応させている(著者撮影)

5月発売予定の最新モデル「NuAns NEO[Reloaded]」は、同社の星川哲視代表が「どうしても入れたかった」と話す「おサイフケータイ」に対応するなど、他のSIMフリースマホにはない意欲的な内容に仕上がっている。

NuAns NEOシリーズはSIMフリー市場でしか発売されていないことから、大手メーカーの製品などと比べて生産台数は多くはない。にもかかわらず、これだけ独自要素の強いスマホを4万9800円で提供できるのは、やはり中華系ODMメーカーの存在があってのものだといえよう。

女性起業家の注目ベンチャーで相次いだ不祥事

一方で懸念されるのが、ODMを活用するメーカー側に、品質管理に対する甘さがみられることだ。そのことを象徴する出来事が最近起こった。家電ベンチャーのUPQ(アップ・キュー)が販売していたスマホ「UPQ Phone A01X」が、昨年9月から4件の発火事故を起こしていたのだ。

元カシオ計算機の中澤優子氏が設立したUPQもODMを積極活用する企業の1つだが、同社のスマ―トフォンが発火事故を起こすなど、品質管理体制の問題が指摘されている(著者撮影)

そのうち昨年9月に発生した事故に関しては、第三者機関の検証により、原因がバッテリーにあったことが明らかになった。また、今年3月に起きた事故に関して、UPQは事故を認識したものの、消費者庁への報告期限である10日以内に報告できず、同庁から厳重注意を受けている。

同社も中華系のODMメーカーを活用し、さまざまな家電機器を提供している企業だ。だが同社はスマホの事故だけでなく、4Kディスプレイに関してもスペックに誤表記があったことが4月に明らかになった。相次ぐ問題の発覚に、品質管理に対する姿勢の甘さが指摘されている。

製品の機能・性能面や販売に力を入れる企業は多いが、安心して利用できる品質を確保できなければ、消費者から支持を得ることはできない。中華系ODMメーカーの存在がスマホメーカーの“大衆化”をもたらしたのは確かだが、それが“安かろう悪かろう”とならないように、品質を厳しくコントロールする必要がある。それこそがODMを利用する企業の成功を左右するといっても過言ではない。

佐野 正弘 モバイルジャーナリスト

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さの まさひろ / Masahiro Sano

福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける

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