切れ長の目がつねにくるくる動き周囲の状況に気を巡らしている。利発そうだ。その瞳はこちらの視線をとらえると親しげにほほ笑みかけてきて、口元の笑みも絶やさない。さすがの好感度だ。徐はネット生中継で人気が沸騰したことでドラマや映画に出演するチャンスを得た。そしていまや女優である。
「皆さんにはわからないかもしれませんが、長くやっているので私にとってネット生中継はもう生活の必需品になっています。しばらくやらないと私もファンもお互いに会いたくなってしまうのです」
休憩時間を費やしてまでネット生中継を行う心理について、徐は屈託なくそう話す。共演者やスタッフから反感を買うのではないかと心配になったが、彼らは撮影現場からの生中継をとがめないばかりか、宣伝効果を期待して、むしろ奨励しているという。
「今日のネット生中継では、映画のシーンがどうやって撮影されているのかとか、役者たちはシーン以外では何をしているのかとか、監督やスタッフも紹介しました。これは映画の宣伝にもなりますね、ははは」
この日、彼女が撮影の合間に行ったネット生中継は40分あまり。視聴者はのべ49万5000人。これだけの視聴者を持つなら確かに宣伝効果は抜群だろう。
トリマーから女優へ
徐はこの1年ほど前までは北京市内で小さなペットショップを経営するトリマーだった。
ネット生中継を始めたきっかけは、店の宣伝のため。始めたばかりの頃は、店で犬のカットをし、シャワーを浴びせるなど日々の仕事の様子を生中継していた。
その後、少しずつ増えてきた視聴者を喜ばせるために、遊園地や動物園に出かけて行ったり、季節が変われば買い物に行ったりしてそこから生中継するようになった。さらにそれにとどまることなく、簡単な手品を覚えて披露したり、抽選で視聴者へ賞品を贈ったりと次々とアイデアを加えていった。
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