Google検索の「青色」に隠された最強の分析力 世界の勝ち組企業はビッグデータをこう使う
なぜ因果関係を見極めることがビジネスにとって重要なのか? それは、相関関係のみからでは「本当は何が売り上げ増に寄与したのか」という根本的な問いに答えられないからである。そして、この問いに答えられるデータ分析を続けている企業こそが、競争を勝ち抜いているという、紛れもない事実がある。
たとえば、グーグル、ヤフー、アマゾン、ウーバーなどのIT企業では、日常的に因果関係分析を行って最適なビジネス戦略を選択している。
グーグルが240億円稼いだ「最適な青色」の分析
現在ヤフーの現在最高経営責任者(CEO)として働くマリッサ・メイヤー氏は、前職のグーグル社員時代に「41種類の青から最適な青を選ぶ」というウェブサイト広告の因果関係分析を行って広告収入を大幅に上げたことで有名だ。
当時グーグル社内では、どのような「青色」の文字をウェブサイト上で表示することが利益につながるのか、という議論が起こっていた。通常の企業であれば、「社員による多数決で決まった青色」や「有名なデザイナーが選んだ青色」に決めてしまいそうだ。
しかし、マリッサ・メイヤーは敢えてビッグデータを用いた因果関係分析を行うことを提唱した。41種類の青色とウェブサイト利用者の行動データを分析し、「利用者のクリック数を最大化できる最高の青色」をデータ分析から突き止めたのである。グーグルの試算では、この青色を採用したことによって年間2億ドル(240億円)の収入増がもたらされたという。
では、どのようなデータ分析を行えば、因果関係を正しく判定できるのか。拙著『データ分析の力―因果関係に迫る思考法―』では、最新のさまざまな分析手法について、数式をいっさい使わずに、具体例とビジュアルな説明を用いて紹介している。
まず、第1の手法は「世の中で実際に実験をしてしまう」ランダム化比較試験(RCT)という方法である。ビジネスの世界では”ABテスト”と呼ばれることもある。
たとえば、オバマ前大統領が選挙戦で使ったのがこの手法である。オバマ陣営はウェブサイトの画面デザインを工夫することでサイトへの訪問者を増やし、オバマ候補を応援するメーリングリストへの加入を増やそうと試みた。陣営は4つの画面案と、それぞれの画面に加える6つのメッセージ案を考えた。つまり、24種類の案が示されたということだ。
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