東電の「お手上げ」を恐れる、原子力規制委 放射能汚染水の流出阻止へ、異例のテコ入れ

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もちろん東電はこの間に何もしてこなかったわけではなかった。7月8日には「水ガラス」と呼ばれる特殊な薬剤を注入する地盤改良工事に着手した。しかし、大雨も続いて地下水位が急速に上昇した結果、「地下水は止水対策(水ガラス)の上端部を乗り越えて海に流れ出している可能性がある」(更田委員)。

8月2日の会合では、参加メンバーから東電の幹部に厳しい意見が相次いだ。
 「とにかく止水対策を急いで欲しい。手に余るのであれば、何が作業のスピードアップを妨げているのか、速やかに声を上げて欲しい。できませんでしたではすまされない」(更田委員)。

「1、2号機だけでなく、3、4号機前でも(地下水に含まれる)放射線の値が高いことから、同じ問題が起きているかもしれない。スピードとカバレッジをしっかりやらないと同じ失敗を起こしかねない」(安井正也・原子力規制庁緊急事態対策官)。

火中の栗を拾う原子力規制委

規制委側は、東電が8月末までに着手するとしていたポンプ設置による地下水のくみ上げを前倒しで実施するように強く要請した。

そもそも規制委は電力会社を監視する立場にあり、対策実施はあくまでも事業者である東電の責任だ。汚染水の問題については「われわれが踏み出す領域かについては議論がある」と更田委員は会合で述べている。それを承知で規制当局が火中の栗を拾わざるを得ないところまで、事態は深刻度を増している。
 

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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