テスラの期待値がGMを上回った本当の意味

日本の自動車産業に求められる人材獲得

日本の自動車各社は、この「地殻変動」に人組織の面で、どう備えようとしているのでしょうか。方策のひとつが、「脱・自前主義」です。

たとえば、トヨタ自動車では2016年12月に、革新的なテクノロジーやサービス、アイデアを持つ企業やベンチャー、研究機関と、トヨタの持つ経営の資産(アセット)を組み合わせることで、未来のモビリティ社会を創出するオープンイノベーションの取り組みである「TOYOTA NEXT(トヨタネクスト)」をスタートしています。

トヨタは2016年1月に、米国に人工知能(AI)の研究開発会社「トヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)」を設立。米国防総省の国防高等研究計画局プログラム・マネジャーの経歴を持つロボット界の大物、ギル・プラット氏や、グーグルのロボティクス部門の責任者だったジェームズ・カフナー氏といったシリコンバレーの優秀な人材を引き入れるなど、新技術人材や異能人材の確保も進めています。自動車産業にIT産業人材が入ってこなければ、IoTやインテリジェント化を進めることは難しいという経営判断があったのでしょう。

とはいえ、これは米国での話です。米国社会では、リーダーが会社を移ることは当たり前ですから、グーグルで重要なポストについていた人が自動車メーカーに転職することは不思議なことではありません。しかし、日本ではリーダーレベルでの異業種間の人材の移動は盛んとは言えません。

背景には、「ムラ意識」的な、異分子が入ってくることへの本能的な怖さもあれば、異業種人材を受け入れるにはきちんとした受け皿をつくらないといけないという日本的なきまじめさもあるでしょう。

本来ならば、自動車業界に何が起きようとしていて、それにはどんなリーダーが求められ、その人材をどんな業界から引っ張ってくればいいのか。人事部も人材エージェントも真剣に考えて、異業種人材の移動を促すのが望ましい局面に来ています。

<(仕事以外の)コミュニティ>と<社会的使命感>

私は以前、ある自動車メーカーの開発部門で、新車種の開発総責任者のような大きな仕事を任される「ラージプロジェクトリーダー」と、車の一部の開発を任される「プロジェクトリーダー」の行動パターンを比較するという仕事をしました。

リーダーたちへのインタビューやディスカッションを通して発見できたことの1つは、前者のリーダーは、今のポジションに就くずっと以前から、仕事と直接には関係のない人脈やコミュニティとのネットワークを持っていることでした。なかには高校生のコミュニティに参加している人もいました。ラージプロジェクトリーダーに特有だったもう1つの発見は、「社会的な使命感」が非常に強いことでした。

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