テスラの期待値がGMを上回った本当の意味

日本の自動車産業に求められる人材獲得

インタビューで「あなたは何を造っているのか」を質問したところ、ラージプロジェクトリーダーの1人から「ゴミを造っている」と答えが返ってきました。「車もいつかはゴミになる。だからこそ、長い間乗れるものでなければいけない。リセールバリュー(中古車価格)も高くなければいけない。再生できる部品をなるべく使わなければいけない」と言うのです。

このことからも、リーダーとして大きな仕事を成し遂げるには、今の仕事と直接関係のない、異質なコミュニティを持つことが有用であることがわかります。さらに、幅の広いさまざまな体験や勉強を通じて、自らはどんな目的や意義を持って働きたいのか、どう社会に貢献したいのか、という社会的使命感を育むことが大事なのです。

かかわった時期で仕事への姿勢が変わってくる

仕事で人は育つといわれます。しかし、事業の段階と、そこにかかわった人の関係を見ると、そう単純ではありません。事業の立ち上げ期にかかわった人と、事業の安定期にかかわった人、衰退期にかかわった人とでは、そこで得られるものはまるで違うはずです。

事業が安定している時期にかかわった人は、業務品質を高め、組織の生産性を高めるマネジメントスキルを獲得することができます。逆に、事業を立ち上げていく時期にかかわった人は、さまざまな苦難を乗り越えていくプロセスで、チャレンジ精神や柔軟性、克己心が備わるでしょう。不幸にも事業の衰退期に立ち会う人は、そのいずれも身に付けることができず、守りの姿勢だけが強くなってしまいがちです。

さらには、近年では、人間の寿命はどんどん長くなっていく一方で、会社や事業の寿命はどんどん短くなっていくという問題がクローズアップされてきています。「一億総活躍」と「生涯現役」が求められ、人生を二毛作、三毛作しなければならない時代だからこそ、「どんな会社で」「どんな事業に」だけでなく、「どんなフェーズに身を投じるべきか」を真剣に考えなければ、60歳以降もバリバリ働ける人がたくさん現れる社会にはなりません。

自動車産業は、今後の社会を大きく変える力、インパクトを持っています。イノベーションの可能性にあふれ、その可能性を実現できる投資力も持っています。社内には「立ち上げ段階」の事業の芽が豊富にあるはずです。しかも日本企業が世界トップを占めている稀有な産業でもあるため、世界的な規模でビジネスを展開できるのがもう1つの大きな魅力です。そこにチャンスを見いだすチェンジリーダーたちが集まるしかけを、業界が一丸となって創っていくことが大事だと思います。

世界で長期間にわたって称賛される企業の共通点とは何でしょうか? それはいうまでもなく、社会をより良くしていくリーダーを集め、育成し、活躍させる企業です。今こそ自動車業界の中から、GEやグーグル、アップルのような、世界中のリーダーを集め、活かし、他の産業にも輩出できるような「リーダー輩出企業」を目指す好機なのです。

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