トランプ大統領が操る「狂気の戦略」の正体 「何をしでかすか分からない」キャラの効果
「彼ら(ベトナム)はニクソンが行使する軍事力の脅威を信用するだろう……私はそれを狂気の戦略と呼んでいる。私がある段階に達したら、戦争を終わらせるためになんでもするかもしれない、と北ベトナムに信じてもらいたい。……『ニクソンは怒ったら抑えられなくなる。彼はその手を核のボタンに掛けている』とね」
このように、ニクソンは何をしでかすか分からない人物だとする情報を、ベトナム側に意図的に流した。
また、ニクソン大統領とキッシンジャー補佐官はベトナム和平交渉中には、ソ連が北ベトナム側に譲歩を働きかけてくれることを期待して、核戦争が切迫しているかのように偽装して「核戦争警報」を出したこともあった。
しかし、冷静なニクソンを「マッドマン」と信じさせることはできず、こうした策略は失敗したという。
孫子の兵法も「兵とは詭道なり」と、戦争とはだます行為であるとしている。また、マキャベリも「気違いじみたふりをするのは非常に賢いことだ」と述べている。
テレビ番組で身に付けた人気集めの手法
だが、トランプ氏自身がニクソン氏や孫子、マキャベリから学んで狂気の戦略を実行したとは考えにくい。
恐らく彼は、テレビ番組の司会者として、人気を集める方法を身につけたとみていい。米週刊誌『タイム』3月23日号のインタビューで、彼は「私は非常に直観的な人間だが、私の直観は当たる」と述べている。自分自身で「常軌を逸していて、予測不可能」な行動を楽しんでいるようにも見える。
シリア政府軍が化学兵器を使用したとのニュース映像を見て、長女イヴァンカさんの指摘を待つまでもなく、こうした残虐行為に対して懲罰攻撃を加えれば国民の支持を得られるし、北朝鮮のような国は恐怖感を持つと、直観的に考えた可能性は十分ある。
フロリダの別荘での習近平中国国家主席との夕食会中、デザートの「これまで見たこともないきれいなチョコレートケーキ」を口にした際、シリアに59発のトマホーク・ミサイルで懲罰攻撃を加えたことを伝えた。習主席は「もう一度通訳を」と求めて事実を再確認した上で、「OK」と返答、トランプ氏は首脳会談の成功を確信したという。
この会談の直前まで、トランプ氏は中国を「為替操作国」に認定するとしていたが、会談後は為替操作国とは認めない、と180度変わった。
中国もトランプ氏のペースに乗せられた感がある。