フランスの子供が新生児から1人で寝る理由 出生率2.01の裏に「重圧なく育児できる」環境

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フランスの親は、小さな子どもを他の人に預けることにもあまり抵抗はない。周囲がそれを責めるという話も聞いたことがない。フランス人女性に「日本では、保育園に子どもを預けて働くことに罪悪感を持つ人もいる」と話したことがあるが、女性は心底驚いたという顔をして、「フランスでは、小さいうちから保育園に子どもを預けて働くことは当然のことよ」と言った。

働いている親は、子どもが3歳で幼稚園に入るまで、保育園に通わせたり、ベビーシッターに預けたりする。平日昼間の公園は、ベビーシッターに連れられた子どもでいっぱいだ。仕事中だけでなく、夜に夫婦で食事に出掛ける場合などにも気軽にベビーシッターを頼む。

週末になると、公園には親子連れの姿が多くなる。日本の公園では、砂遊びなどして子どもと一緒に遊ぶ親の姿も目立つが、フランスの親はベンチに座って、雑誌や本を読んだりしているのが普通だ。子どもは子どもだけで遊ばせて、時々チラチラと目を上げて様子を見守っている。子どもが自分で創意工夫して、自由に遊ぶことを重視している。

外で駆け回れば幼い子どもはよく転ぶものだ。日本人の場合は、子どもが転んだらすぐに駆け寄り、助け起こして「ケガはない?」と確認する親も多いのではないか。フランス人の親は子どもが転んでも、血相を変えることはない。子どもが泣きもせず、自分で起き上がり再び遊び始めたらベンチに座ったままでいる。子どもが泣いたときだけ、そばに行って世話を焼く。

子どもの長期休暇でも、つきっきりではない。フランスの幼稚園・学校は、年5回も長期休暇がある。フランスの企業では有給休暇が多いが、すべての学校休暇に合わせて親が仕事を休むことはできない。学童保育のようなシステムもあるが、祖父母宅で子どもを預かるケースも多い。祖父母とはいえ、親と離れて過ごすことは、子どもの自立心を養うことに役立っている。小学生でもパリから1人で長距離列車に乗り、フランス南部にある祖父母宅を訪ねる子どももいた。長期休暇中に夫婦で旅行をするために、祖父母宅に子どもを預けるという家庭もある。夫婦の時間を大切にすることに、祖父母の世代でも理解があるのだ。

親であるだけでなく、自分の人生も存分に楽しむ

『パリの朝食はいつもカフェオレとバゲット』(上の書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

こうして、適度に息抜きができるフランスの母親は、子育てにそれほどプレッシャーを感じていないようだ。家族政策が手厚いこともあるが、2人、3人と複数の子どもをもつ人も多い。子育ての一方、自分や夫婦としての人生も楽しんでいる。一人息子を育てる日本人の母親が、「もう子どもは産まない。大変だから」と話すのを聞いたことがある。彼女は教育熱心で、家事もきっちりとこなしていた。日本では、親の務めをしっかり果たそうとする女性ほど、子どもを産むことを躊躇してしまう傾向もある。

自立を重視した子育ては、母親にとって手間が省けて気が楽な面もある。子どもにとっても、親から干渉されず自分で考え行動することは、失敗はあっても長い目で見ればプラスになる。フランス流の子育ては、母親にとっても子どもにとってもメリットがありそうだ。

国末 則子 フリーライター

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くにすえ のりこ / Noriko Kunisue

フリーライター。東洋経済新報社、朝日新聞記者を経てフリーライターになる。2001~2004年、2007~2010年の2度にわたってパリに滞在し、2人の子どもを現地校に通わせた。著書に『パリの朝食はいつもカフェオレとバゲット』(プレジデント社)。
 

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