東芝の危機が映す「日本的経営」の根本的弱点

終身雇用の派閥争いが閉塞感と危機を呼ぶ

利益率の低さは、東芝に限ったことではないが、日本企業全体の問題だ。日本企業の場合、ROE(自己資本利益率)の平均は全体で5.3%(経済産業省「持続的成長への競争力とインセンティブ」、以下同)しかない。対して、米国企業の平均は22.6%、欧州でも15.0%。日本企業の利益率の低さが際立つ。

その原因はなかなか難しいのだが、バブルが崩壊して以降、日本企業はあらゆるジャンルにビジネスの可能性を求めて拡大戦略を取った。問題は、それらの新しいビジネスが悪化したときに、いかに素早く撤退できるかだ。海外、特に米国企業などはその意思決定が速い。

その点、日本企業はメンツなどにこだわって撤退の意思決定が遅い。その中には社内の敵対する派閥に対するメンツが優先するケースもあるようだ。

派閥争いがもたらすもの

意思決定が遅い説明になるかどうかはわからないが、もう1つ、日本企業の弱点といわれるのが、大半の日本企業がいまだに採用している終身雇用制の問題だ。新卒で一括採用して、その後1社だけに在籍して、最終的には社長にまで上り詰める。そこで起きることの1つが派閥争いだ。

出世ができるかどうかの判断は、実績を残すのが理想だが、勝ち組派閥の一員であった場合も少なくない。負け組派閥の中に有能な人材がいたとしても、淘汰されるケースがある。そして、よく指摘されることだが、派閥の中でトップの言うことを聞くだけの「イエスマン」だけが生き残って社長に上り詰めるケースが少なくないことだ。

東芝と同様に巨額の最終赤字に苦しんだ日立は、その立て直し役として白羽の矢を立てたのが、当時子会社にいた川村隆前会長だった。「外」にいた川村氏は日立の弱点がよく見えたといわれる。半導体やテレビなどのメイン事業を思い切って切り離すことで立ち直りに成功した。東芝も、本来であれば同じような時期に改革に取り組むべきだったのかもしれない。

東芝の経営陣といえば、不適切決算を機会に西田厚聰、佐々木則夫、田中久雄の3歴代社長に対して、東芝側が損害賠償を求めて訴えているが、「イエスマン」がトップに立つと、突然「ワンマン」に代わる傾向が強いのかもしれない。

その結果、周囲は何も言えなくなって、意思決定が遅れる。それを阻止するのが、メディアなどの調査報道だが、日本ではメディアの力が弱い。

いずれにしても、これまでの日本企業は、時代の変化とともにさまざまな難局を経験してきた。総合家電などに絞っても、冒頭でも指摘した日立やソニー、オリンパスなどのケースが記憶に残る。アベノミクスが始まって以降、5年間でシャープ、東芝と経営危機が続いている。

そもそもアベノミクスとは、異次元の金融緩和であり、本来なら倒産するはずの企業も生き残って、ゾンビ企業が増えるのが自然だ。ところが、シャープや東芝といった上場企業などの場合、融資している銀行側の経営危機にもつながるため、そう簡単にはいかない。

今後、アベノミクスの金融緩和が縮小して、金融引き締めに動いていったとき、アベノミクスだから生き残ってきたゾンビ企業がどの程度現れてくるのか。東芝問題が氷山の一角でないことを祈るばかりだ。

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