東芝の危機が映す「日本的経営」の根本的弱点 終身雇用の派閥争いが閉塞感と危機を呼ぶ
巨額損失をなぜ見抜けなかったのか、その背景にあるのが、日本特有の経営システムであり、現在の東芝の経営システム上の問題ともいえる。今回の東芝の問題は、この日本特有の経営構造にあるのではないか。
(3)機能しなかったコーポレートガバナンス
東芝といえば、周知のように今回の問題が表に出る前に不適切会計の問題で世間を騒がせた。歴代の社長も裁判にかけられている。その不適切会計問題発覚の際に盛んに指摘されたのが、企業としてのガバナンス(企業統治)の問題だ。企業統治とは、簡単にいうと企業の価値を維持、向上させるための「経営陣の監視システム」のことだ。社外取締役の複数専任の義務化などが2015年から始まっている。
現在、東証1部上場企業には、コーポレート・ガバナンス・コード(企業統治指針)によって定められた強化法が義務づけられている。東芝にも複数の監査役がおり、そうそうたるメンバーがそろっている。それでも早期に巨額損失の実態を把握するのは難しかったのかどうか、疑問が残る。元官僚や学者ばかりが目立つ、日本の社外取締役がきちんと機能していないのは明白だ。経営危機を乗り切ったソニーやパナソニックのケースを見れば、社外取締役の重要性がわかる。
いずれにしても、東芝は今回の巨額損失を乗り切るために大黒柱の半導体事業を手放し、海外の原発ビジネスからも撤退し、社会インフラや福島第一原発の廃炉処理といった事業だけに絞った企業として再出発することになる可能性が高い。
とりわけ大きな問題といえるが、原発事業と社会インフラ整備事業からも撤退ということになれば、日本全体に取り返しのつかない重大な影響をもたらす。そういう意味では、放置せずに政府も積極的に介入するという選択肢は外せないだろう。
問題は日本的経営の弱点?
今回の問題は、言うまでもなく東芝の経営陣にその責任がある。それは間違いないのだが、日本企業の代表的な存在であった東芝が抱える問題は、日本企業全体の問題ともオーバーラップしてくる。日本企業全体の問題とは何なのか。大きく分類とすると、次の4点が浮かび上がる。
(2)意思決定が遅い
(3)いまだ残る終身雇用の慣行
(4)イエスマンのみ出世だが、派閥争い激化という現実
無料会員登録はこちら
ログインはこちら