東芝の危機が映す「日本的経営」の根本的弱点

終身雇用の派閥争いが閉塞感と危機を呼ぶ

(1)ウエスチングハウス(WH)の買収プロセスは適切だったのか

そもそもの問題はここに尽きるわけだが、買収のプロセスで徹底した「デューデリジェンス(資産査定)」が実施されていれば、こんな問題は起きなかったはずだ。その時点で抱えていたプロジェクトが持つ将来的なリスクを見抜けなかったという失敗がある。

「日本企業による海外企業への投資金額は高すぎる」という指摘は以前からあった。高値づかみして、買い取ったものの結果を出せずに、最終的には売りたたかれて損失を出すというパターンが多い。東芝がWHを買収したのは2006年。三菱重工業やGEなどと競ったうえでの買収成功だった。買収金額は54億ドル。2015年までに当時の原子力事業を3倍に拡大する目標を掲げていた。

当時のWHは、すでに4基の新規原発事業を抱えており、潜在的なリスクが10億ドル以上あったことは東芝側も認めている。当初は総合商社の丸紅がパートナーとして参加していたにもかかわらず買収直前で撤退し、その代わりに米ゼネコンのショー・グループ(現CB&I)と提携し、20%を出資させたものの、いつでも撤退可能なプットオプションを設定していたために、2011年の福島原発事故にそのオプションを行使されている。

結果的に、東芝は単独でWHの巨額損失を抱え込むことになったわけだが、佐々木則夫氏が社長に就任した当時は、東芝が総合家電から原発事業に転換した象徴ともいわれた。佐々木氏はひたすら原子力畑を歩き、原子力運転プラント設計部長、原子力事業部長などを歴任。日本の電力会社が原発新設を凍結し、国内の原発事業が窮地に陥ったとき、東芝はWHを買収して海外戦略の扉を開いた。その買収の先頭に立ったのが佐々木氏だったわけだ。

しかし、2011年の福島原発事故の際に、原発ビジネスを推進していた企業の多くは、事業の縮小を実施した。原発の安全性に疑問符が生じて、潮目が変わったのだ。しかし、東芝はここで時代に逆行してしまった。

デューデリジェンスが適正に行われたのか?

(2)損失拡大をなぜ放置したのか

WHに絡む巨額損失で疑問なのが、東芝が2016年10月以降になって初めて気がついたと主張していることだ。もともと今回の巨額損失は、WHの原発建設を担当している建設会社「CB&I ストーン・アンド・ウェブスター(S&W)」が抱え込んだ損失だが、東芝はこのS&Wを2015年春に買収している。

この時点でのデューデリジェンスが適正に行われたのかも疑問だが、買収からわずか1年半後に7000億円を超える巨額の損失が突然発生したと主張している。監査法人の適正意見がないままに2016年4~12月の決算発表をせざるをえない状況に追い込まれた背景には、監査を担当している「PwCあらた」が東芝の説明に納得していないためだ。

隠蔽していたとすれば粉飾決算の疑いもかかるが、本当に気づいていなかったとすれば、経営管理能力の低さが問われる。東芝の現在の借り入れは1兆3000億円を超えている。メガバンクや地銀などが、一斉に資金回収に動くのを防ぐ意味でも、「意見表明なし」の決算に踏み切るしかなかったわけだ。どちらにしても債務超過の状態に陥っている現状を放置すれば、2018年3月末までには上場廃止に追い込まれる。

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