最長766m!渋谷駅乗り換え距離の辛い現実 データで見えた首都圏「駅改良」の影響

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同駅は、新宿と八王子方面を結ぶ京王線と、多摩ニュータウン方面へ向かう相模原線の分岐駅。かつてはホーム2面4線の地上駅で、地上の駅舎とホーム間は地下通路で結ばれていたが、2008年夏に地下化工事に向けて仮設の橋上駅舎に変更。2012年8月に地下化され、地下2階が下りホーム、地下3階を上りホームとした2層構造の駅となった。

現在、相模原線の上りから京王線の下りへ乗り換える際の水平移動距離は38.3メートル。仮設の橋上駅舎だった2010年の調査では81.0メートルだったため、距離は大幅に短縮された。上下の移動距離も、以前は橋上駅舎へいったん上り下りしなければならなかったが、エスカレーター1本を上るだけに変わったため、11.7メートルから6.2メートルへとほぼ半減している。駅の地下化によって大きく利便性が向上した例といえるだろう。

もっとも、調布駅での乗り換えは同じ京王電鉄の路線同士であり、渋谷駅や下北沢駅とは条件が異なるため、一概に比較できない面もある。

「バカの壁」撤去の影響は?

改良によって乗り換えの利便性が上がった駅としては、東京メトロ半蔵門線・都営地下鉄新宿線の九段下駅も挙げられる。同駅はかつて半蔵門線押上方面と新宿線新宿方面のホームやコンコースが壁で仕切られていたが、2012年には当時の猪瀬直樹東京都知事が、この壁を東京の地下鉄一元化を阻む「バカの壁」と指摘。翌年には壁が撤去された。

壁が撤去されたことでホームは広々とした雰囲気になったが、利便性はどの程度向上したのだろうか。同駅での半蔵門線—新宿線乗り換えの際の「乗換え移動距離」は177.7メートル。以前は200.3メートルで、約30メートル短縮されたことになる。かつては壁で阻まれ、いったん改札を出なければならなかった乗り換えが改札内で可能となった効果だろう。

データで見ると、この5年間で便利になった駅もあれば、渋谷駅や下北沢駅のように以前より乗り換えの平均移動距離や所要時間が延びてしまった駅もあることがわかる。だが、両駅はまだ工事の真っ最中だ。

渋谷駅は、現在は遠く離れているJR埼京線・湘南新宿ラインのホームが山手線ホーム付近へと移設される計画で、東京メトロ銀座線も駅の移設に向けた工事が進んでいる。下北沢駅も、2018年春には現在の地下3階ホームに加えて各駅停車用の地下2階ホームが完成し、2層構造となる予定。地上と地下3階のホームを直結するエスカレーターも2016年に完成した。

休むことなくさまざまな駅で工事が行われている首都圏の鉄道。利便性がアップする方向へと変化が進むことを期待したい。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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