アニメ「聖地」で魅力PR、京阪と叡電の挑戦 きっかけは「けいおん!」巡礼者だった
京阪本線の墨染駅ホームに人気キャラクターの等身大パネルを設置したのは若林浩吉さんだ。人の少ない時間帯に準備をしていると、どこで聞きつけたのかカメラやスマホを持った5~6人のファンが作業の様子を撮影していた。
数日後、若林さんは利用データを見て驚いた。墨染駅の乗降客数が明らかに増加していたのだ。現地の駅員からもファン熱の高さについて報告があった。伏見稲荷駅など縁のある他駅でも「聖地巡礼」する彼らの姿があった。
「聖地」をどのように地域資源として活用していくか。それが次の課題となる。
地元と協働し「巡礼イベント」開催
京阪が意識して動いたのは、2015年の人気テレビアニメ「響け!ユーフォニアム」が初めてだ。
吹奏楽部の高校生たちの成長を描いた学園ドラマの中で、宇治駅、黄檗(おうばく)駅、六地蔵駅……と京阪宇治線の風景が随所に描かれている。取材協力したこともあり、13000系電車のデザインは精密なものとなり、音にもこだわった作り込みがなされた。
ファンたちは作品世界を追体験すべく、宇治線を訪れた。主人公たちが学生生活を送った電車に乗り込み、ベンチに座り、各駅に置かれた等身大パネルと記念撮影をしていった。
「彼らにまた宇治市に来てもらえないだろうか」。京阪は宇治市や観光協会、商工会、地元大学などと協働しながら検討を重ね、2016年に「聖地巡礼イベント」をスタートさせた。舞台めぐりマップを作成したうえで、スタンプラリーを企画。宇治市内の広範囲に足を運んでもらえるよう工夫を凝らした。
今年(2017年)1月からは、巡礼イベント第2弾がスタートした(5月21日まで)。4月8日には、「宇治市×京阪電車 響け!ユーフォニアム2 コラボレーションフェスタ」を開催し、地元の中学や高校8校の吹奏楽部によるコンサートに1600人が集まった。
当日、京阪宇治駅から宇治市内を歩いてみたが、満開の桜や平等院、飲食店を巡る観光客と共に、舞台めぐりマップを片手に散策するファンたちの姿をたくさん見かけた。舞台となった橋で制服のコスプレをした人たちが記念撮影している姿は本当に楽しそうだった。
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