「女性は手先が器用で、同じ作業も飽きずにきめ細かく仕事をしてくれます。このセル生産方式で、多品種少量生産に対応でき、生産効率も一気によくなりました」
そう語るのは吉田夛佳志会長。こうした現場女子の活躍が評価されて、昨年8月、日本政策金融公庫、近畿大阪銀行の女性活躍応援融資商品「+Lady」の第1号にも選ばれました。
取材中に意外な出会いがありました。知り合いのストレッチヨガの先生が、会社の会議室でヨガ教室を開いているのです。笑顔の素敵なアンシー先生という方です。お話を聞くと、教室は吉田会長の発案とのこと。「立ち仕事の女性を労ってあげたい」と、女性パート社員向けに月1回のヨガ教室を始められたそうです。
就業時間中の午後3時から4時までの1時間、2班に分かれてヨガ講習を受講します。もちろんその時間の給料も支払われます。自宅でも練習でき、健康増進につながると好評です。「家に帰ってからも家事、育児があるので、就業時間中に行ってくれる思いやりの気持ちがありがたいです」と若いママのパートさん。そして、この道32年のベテランの女性も、「パートさんを大切にしてくれる会社だと思います。だから30年も続きました」。
パートの採用は、昭和40年代後半、集団就職という言葉がそろそろ使われなくなった頃からです。家庭の主婦も働きたいはずだ、と全国に先駆けて主婦のパート採用を始めました。
「パート社員は労働時間が短いので、効率を上げる仕組みづくりが必要でした」と吉田会長。試行錯誤の中で生み出されたのが、前述の「セル生産方式」です。各自ブースの中で、他人の仕事を待つこともなく、自らのやり方で生産量を増やすことができます。数や品質に応じてボーナスもアップするので、やり甲斐もあります。
現場女子の提案で作業効率アップ
さらにパート社員自ら、仕事が便利になる道具を発案しています。ミラーの裏のケーブルを通すゴムに、十字の切り込みを付ける作業があります。以前はカッターで切り込みを入れていました。時間もかかるし手を切る危険もあります。そこで十字の歯をセットし、レバーを下げて切る工具をパート社員が考案しました。おかげで作業は3倍速くなったそうです。この他にも、ミラーの縁に防水テープを貼る工具、ゴムを伸ばす引っ掛け金具など、現場女子の提案で作業効率を上げる便利工具が開発されています。
「わが社の社是は、“いいものを早く安く”です。パートさんのアイデアによって、原価が引き下げられ、良いものを安く早くお客様に届けることができます」
提案制度、報奨制度という形ではなく、自主的に会社の利益を高める工夫に全員が取り組んでいます。自分たちが合理化努力して効率をよくすることで給料が上がるし、会社も価格競争力を持って発展できます。自分の給与は自分で稼ぐ、という会長の考えが浸透し、会社のため、自分のために皆さん頑張っているのです。
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