ニイウス乱脈経営 会計疑惑まで浮上

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食い違う日立側の認識 IXI事件とも接点
 ところが、日立に問い合わせると、驚くような回答が返ってきた。「当該の販売実績が記録に見当たらない」というのだ。ニイウスによれば、稟議書ではパッケージソフトの購入とあるが、実際には個別仕様のシステム開発を外注したのだという。そのため日立側に販売実績の確認ができない可能性があるとの説明だ。

 が、稟議書と実際の取引内容が異なるというのも不可解だ。ニイウス本体からニイウスメディカルへの譲渡時における後者の臨時取締役会資料(06年6月30日付)も入手したが、そこでも前出の稟議書が判断の拠り所となる重要資料として添付されている。実際の品物と齟齬がある稟議書を2年近くも後に使用したのは、通常より審査が緩いグループ内取引だったからとでもいうのか。

 取材に対して、ニイウス側は日立との取引があった証拠として銀行振込伝票などを示した。しかし、そこに記載された日立の担当部署は「金融情報サービス事業第1営業部」。医療関連ではない部署に開発を委託したというのも不自然な話だ。

 稟議書と実際の取引との内容の不一致は、電通国際情報サービスから取得した「医療機関向けERP(MM)システム」(9億9000万円)と、シティアスコム(福岡市)の同「(HR)システム」(3億2760万円)についても見られる。ニイウスは「システムが実在するのは確かで稼働状況を見せることも可能」と話すが、仕様書などと突き合わせた技術的検証を加えなければ、資産の実在性はわかりようがない。

 これらに関連して気になるのは、ここ数年でニイウスが急速に事業用資産を膨らませてきた点である。金融部門でのサービス事業強化などを謳い文句にして最初に急増したのはリース資産。わずか3年で6倍以上の約200億円にも達した。基準変更で昨年2月末には過年度分について大幅な増額訂正を行ってもいる。リース資産が横ばいとなった昨年6月期には、ソフトウエア中心に無形固定資産取得で115億円もの支出を行った。それらの相当部分が1年も経たずして巨額損失となった。

 実はニイウスの過去の会計処理をめぐっては、ほかにも重大な事実がある。今年2月に強制捜査が入ったアイ・エックス・アイ(IXI)による架空循環取引に参加していたのだ。実体のない架空商品を右から左に流す「スルー取引」を複数の企業間で行うのが架空循環取引だが、それを売上高に計上していれば、不適切な会計処理に当たる。

 IXI事件では、参加企業を仲介するフィクサーがいた。その人物は主に参加企業のリストを資金供給源の東京リースに持ち込んでいたが、その1社がニイウスだった。東京リースが起こした裁判の記録によれば、05年秋からの約1年間で、ニイウスは少なくとも3回は取引に参加している。いずれも東京リースの販売先として登場し、取引額は1回当たり15億~26億円だった。

 ニイウスは1992年に日本アイ・ビー・エム(IBM)と野村総合研究所などの合弁でスタートし、末貞郁夫会長はじめ経営陣の大半をIBM出身者が占めてきた。“毛並みのよさ”は業界でも随一だ。02年4月の上場後、業績は好調ぶりを示し続けた。それを背景に2回の公募増資を実施して133億円を株式市場で調達した。しかし、本誌が9月15日号で指摘した「高級社宅問題」もそうだが、ここにきて噴出した乱脈経営ぶりは看過できない。「名門企業」であるからこそ、投資家に対する背信ともいえる今回の事態を招いた真相について、すべてを語る責務があるのではないだろうか。

(書き手:高橋篤史、井下健悟 撮影:尾形文繁)

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