名鉄の名古屋駅新ビルが400mもある理由 わかりにくいホーム構造が「自殺ゼロ」に貢献

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名古屋駅再開発について説明する名古屋鉄道の安藤隆司社長(筆者撮影)

肝心なのは、地下にある名鉄と近鉄の名古屋駅の改良だ。特に名鉄名古屋駅はホーム3面2線という単純構造にもかかわらず、1つの番線に10を超える行き先の列車が発着する。慣れない人は戸惑うこと必至だ。再開発計画では駅の面積は現在の2倍になる。安藤社長は「利用しやすい駅にする。行き先別に乗り場を造ることも検討したい」と言う。

ただ、気になるのはホームドアの整備である。国土交通省では利用者10万人以上の駅について原則2020年度までにホームドア設置を求めている。名鉄名古屋駅の1日の乗降客数は27万人なので整備の対象となる。安藤社長は「大規模改造のタイミングに合わせて整備したい」と言う。つまり、2027年だ。10年先ということになるが、国交省は駅の改造計画がある場合はそれに合わせる形でもよいとしている。

飛び込み自殺が起きない意外な理由

ホームドア整備を10年も放置して大丈夫かという気もするが、実は、名鉄名古屋駅では2005~2014年度に飛び込み自殺、2010~2014年度に視覚障害者の転落事故が1件も起きていない。意外に”安全”な理由について、名鉄側は「ホーム上にたくさんの駅員がいるからではないか」と言う。名鉄は行き先がわかりづらいという批判ゆえにホーム上にたくさんの駅員を配置している。そのため監視の目が行き届き、思わぬ安全対策につながっているというわけだ。

とはいえ、ホーム上での列車接触・転落事故は2005~2015年の10年間で5件起きている。いずれも死亡事故に至らなかったのは幸いだが、今後も安全とは限らない。ホームドアが整備されるまで死亡事故が起きないことを祈るばかりだ。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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