「子連れ電車移動」日本と欧州はこんなに違う 騒ぐ子供は乗れない「サイレントカー」もある

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チューブの愛称で親しまれるロンドン地下鉄は、地下深くを走るにもかかわらず段差だらけでバリアフリーとは程遠い。しかし人々はすぐに手を差し伸べてくれる(筆者撮影)

ところで、バリアフリー化が日本より進んでいる印象の強いヨーロッパだが、それは大きな間違いだ。比較的システムが新しい都市を除いて、意外とバリアフリー化は進んでいない。特にロンドンやパリなど、ヨーロッパの中でも歴史ある大都市は、行く先々で障害が待ち受けている、と言っても過言ではない。

世界最古のロンドン地下鉄は、150年以上の歴史を誇るだけあってシステム全体が古すぎ、地下深くに掘られたホームへ、地上からエレベーターだけで到達できる駅はかなり少ない。日本でも同じ状況が指摘されているが、地下にあとからエスカレーターやエレベーターを設置しようとしても、地中にある多くの埋設物を避けて設置することは困難を極める。

そんなロンドン市内へ地下鉄を使って出かけると、ベビーカーを押していれば様々な障害に直面する。

しかしロンドンで、ベビーカーを押していて困ったことは、ほとんどなかった。何故なら、ベビーカーを押していれば、それが男性であれ女性であれ、何人もの人が階段で手を貸そうと、間髪入れずにすぐ申し出てくれる。これはもはや、システム云々の話ではなく、社会全体の基本的構造が、弱者に手を差し伸べるよう構築されているということなのだ。

寛容さを失うほどの混雑が問題だ

これはヨーロッパのみならず、海外暮らしをしている多くの子持ちの親から、幾度となく聞いた話だ。私自身も一人の親として感じたことだが、残念ながら同じ状況に直面した際、日本では「間髪入れずに」というほど、手助けを申し出てくれる人が多くなかったことは事実だ。

決して日本人がダメだという話ではなく、これは日本人特有の国民性で、そういう場面ですぐに声を掛けることをつい躊躇ってしまう、シャイな一面なのだと理解しているが、相手を思いやり、困っている人を手助けできる、広い心を皆が持てるような、そんな社会になって欲しいと強く願っている。

システム全体について話を戻すと、日本国内の大都市圏の公共交通機関は、乗客が子供連れに対して寛容になれない、心の余裕を生み出すことができないほどに混雑しているという点も問題として考えなければならない。せめてラッシュピーク時以外は、小さい子供を連れて安心して乗れる公共交通機関であって欲しいし、それだけの十分なスペースを取れるような、余裕のある環境となることを切に願う。

橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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