就活「証明写真」の出来は、内定に影響するか 美白・美肌で修正するより、大事なこととは?

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10年ほど前、就活用の証明写真を撮影する写真スタジオは、数えるほどしかない状況だったが、写真がフィルムからデジタルに変わるにつれて参入障壁が下がり、多くの業者が登場するようになった。「修正」や「美肌」といったサービスは、他社と差別化をはかるために生まれたようだが、オプションとして別料金を取る業者も増えたため、業界内で問題視されるようになったという。

「ですから今後、そのようなサービスをオプションで行う業者は、徐々に減っていくのではないでしょうか。いずれは広告に『修正』『美肌』といった文言を掲載できなくなる方向に向かうかもしれません。もちろん、お客様のほうでご要望ならば、お応えしないわけではありません。たとえば、ケガをしてしまって、面接の日までには治るけど、撮影日にはまだ跡が残っているとか。そんなケースなら、常識の範囲内で修正することも可能です」(井上氏)。写真を鮮明かつ綺麗に見せるために、画質補正やレベル調整程度のことはするが、それ以上の加工は同社では原則的に行わない方針をとっている。

その一方で、同社が長年こだわっていることがある。それは履歴書がコピーされた際の証明写真の写り方。人事担当者たちと情報交換するなかで、履歴書がモノクロで複数枚コピーされ、むしろそちらの方が面接官など多くの人の目に触れることに気付いたという。

履歴書をコピーして見られる状態も想定

証明写真と履歴書をコピーした場合の仕上がり。背景をグラデーションにすることによって、コピー時の写真の見栄えをよくしている(履歴書は東京プロカラーが説明用に使っている見本)

「そこで写真の背景を工夫することにしました。頭の上からグラデーションをつけて色を薄くしていき、最も薄い部分を顔のところの背景に持っていくことにしています。すると、コピーしても写真と変わらない、自然な状態で見ることができます」(井上氏)。真っ白な背景だと、コピーをとると四隅がとれて、顔が浮き上がったように見え、さらに陰影がとれて人間味のある表情も消えてしまうという。反対にグレーやブルーなど色がついた背景の写真をコピーすると、色自体がつぶれて全体が暗い印象に見えてしまうという。

人事担当者にも確かめてみると、やはり履歴書をコピーして配布するのは一般的に行われているという。中には、カラーコピーを使うという会社もあったが、まだまだモノクロコピーが主流のようだ。

「就活は大学時代に1度しか経験しないことですから、初めての経験も多く、誰もが不安を抱えているのではないでしょうか。自己アピールの仕方から服装、書類の準備など、さまざまな不安がある中で、証明写真についても、『どうしたらいいんだろう?』と不安に思っている人もいると思います。そんなとき『これなら大丈夫』と思える証明写真があれば、かなりの安心材料になるのではないでしょうか」と井上氏。

大学生の中には、OBやOGから勧められて、スタジオの証明写真を選ぶ人も多いという。確かにこうした細部まで配慮がいきとどいた証明写真なら、充分な”安心料”が含まれているといえるだろう。

内藤 孝宏 フリーライター・編集者

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ないとう たかひろ / Takahiro Naito

「ボブ内藤」名義でも活動。1990年より25年間で1500を超える企業を取材。また、財界人、有名人、芸能人にも連載を通じて2000人強にインタビューしている。現在、宅ふぁいる便「私の職務経歴書」にてインタビュー記事を連載中。著書に『ニッポンを発信する外国人たち』『はじめての輪行』(ともに洋泉社)などがある。

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