賢い「引っ越し事業者」の見分け方、教えます クライシスは宅配便だけとは限らない

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成約した後の解約についても触れておきたい。通常の商品購入などではクーリングオフは8日間以内になっている。引っ越し契約では、受取日(引っ越し日)の前日の解約は、見積書に記載した運賃の「10%以内」、当日の解約が「20%以内」と決められている。逆に前々日までの解約は無料なので、引っ越し事業者には厳しい内容になっている。そのため業界側では見直しを求めているような状態である。

破損や紛失については、3カ月以内に連絡しないと、事業者の責任が消滅してしまう。なお、破損は修理が原則で、修理ができない場合には、時価での賠償になる。引越約款にない内容については、民法や商法に基づいている。

信頼できる事業者なら、見積もり時に目安として”30万円以上の高価品”の有無について尋ね、消費者に「荷物保険」への加入を勧める。保険に入らない場合、高価品を運ばないことになる。

引越安心マークのステッカーは貼ってあるか

トラブルがないのがベストだが、万が一、トラブルが発生したらどうするか。迅速かつ的確に対応できる社内体制になっている事業者かどうか、簡単に見分けられるように、通称「引越安心マーク」がある。正式には引越事業者優良認定制度といい、消費者庁や国土交通省も参画して創設した制度で、公益社団法人の全日本トラック協会が認定している。認定事業所に所属するトラックには、引越安心マークのステッカーが貼ってあるので、一目でわかる。

引越安心マークは、引越管理者講習の修了者が1事業所に1人以上いて、本社や本部にお客様窓口が設置され、かつその他の要件が満たされると、認定されることになっている。窓口責任者は毎年開催される、研修会(公益社団法人消費者関連専門家会議が協力)に参加しなければ、認定が取り消されてしまうのだ。

見積もり時点で引越安心マークの認定事業者かどうか、担当者に確認するというのも、トラブルを少なくする方法である。新しい生活を迎える前に、ぜひともスムーズな引っ越しで終わりたいものだ。

森田 富士夫 物流ジャーナリスト

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もりた・ふじお / Fujio Morita

1949年生まれ。物流業界を専門に長年取材・執筆を行う。主な著書に『トラック運送企業の働き方改革〜人材と原資確保へのヒント〜』(白桃書房)。

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