このように歴史を振り返ってみると、古代ギリシャの黄金時代は豊かな中間層の出現とともに生まれ、中間層の喪失によって終わりを迎えたということがわかります。豊かな中間層の喪失は、貧富の格差を拡大させ、国家の分断を引き起こし、国力を衰退させていったのです。
古代ギリシャは歴史上で初めて、豊かな中間層が失われると、軍事的にも政治的にも経済的にも国力が衰退していくという教訓を、後世の人々に如実に示した事例であるといえるでしょう。中間層が失われた国は滅びる。現代においては滅びるということはなくても、衰退は避けられない。それが歴史の教えるところなのです。
分断するアメリカは歴史的な危機を迎えた
昨今のアメリカでは、グローバル経済の進展や金融危機の後遺症などを経て、豊かな中間層から貧困層および貧困層予備軍に転落する人々が増える一方で、富が一部の支配者階級に集中するという傾向が強まってきています。2011年に「ウォール街を占拠せよ」をスローガンとして全米各地で行われた反格差デモ活動に象徴されるように、アメリカではすでに国家の分断が起こり始めているといえるでしょう。
さらに悲惨なことに、トランプ政権が誕生したことによって、人種による差別や対立という新たな国家の分断も起こってしまっています。トランプ大統領は移民・難民の入国を制限・停止するという方針をテロの危険性を和らげるための措置だと強弁していますが、それよりもヘイトクライムが横行していることのほうが、アメリカ社会の分断をいっそう促しているので大問題であると思われます。
歴史的な見地から判断すれば、経済格差と人種差別という複合的な国家の分断にさらされているアメリカの現状は、国家としての歴史的な危機を迎えているといっても過言ではないでしょう。アメリカが20年後、30年後に繁栄を享受できているか否かは、まさに国家の分断を回避できるかどうかにかかっているというわけです。
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