暴走トランプを止められるのは結局米国民だ

道連れになるのを防ぐには何をすべきなのか

トランプ氏の遵法精神の無さは国外にも及んでいる。同氏は、米国が産油国の資源奪取や囚人の拷問などの戦争犯罪を行うことを正当化。そして、国家債務を減らすにはデフォルト(不履行)も一案だという暴論すら示唆している。

本来、司法制度は国民がそれを守ることを前提に作られている。法に従わない者が跋扈(ばっこ)すると、制度崩壊につながりかねない。そうなると米国の影響力や権威も失われる。

トランプ大統領が引き継いだ制度は、もちろん完璧とはいえない。だが彼はその制度を補完しようとするより、むしろ制度の短所を増やそうとしている。そして、新たな制度を作ろうとしている。

たとえばトランプ政権が提唱する減税が実施されれば、すでに史上最大に達した米国の所得格差はさらに拡大するはずだ。専門家の試算によると、上位1%の所得が13.5%増える一方、中産階級の所得増はわずか1.8%にとどまる見込みだ。

また、保護貿易主義も庶民の助けにはならない。米国の製造業で失業が起きた主因はオートメーション化であり、貿易ではない。地政学や金融システムの観点からして、保護主義は経済に打撃を与える公算が大きい。

時が経つほど修復も困難に

トランプ氏はものごとを単純化し過ぎる傾向がある。そのため、足元の問題に効果的に対処できないだけでなく、意図しなかった悪影響を招く可能性がある。場合によっては、遠くで起きたささいな出来事が、複雑なシステム障害を引き起こす恐れもある。そして、平等かつ安定した制度を維持するための多様性や経験を欠いている。

政権への抵抗勢力も形成されつつあるが、十分ではない。政権への反対を掲げる人は多いが、現状を追認する空気は議会や経済界、そして一般の社会では根強い。かつてならば信じられないような行動や出来事が正当化され、そして許容されるようになってきている。

最終的には、ネットワークの力学が米国の民主主義体制を再調整するだろう。そうした再調整は段階を踏むのか、整然と行われるのか、あるいは突然起きるのかは分からない。だが、トランプ氏が制度を歪ませる時間が長くなればなるほど、修復が難しくなることだけは事実だ。民主主義体制を再構築するのは誰か。結局は米国民なのである。

週刊東洋経済3月11日号

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