マルハニチロ子会社も関与−−国産ウナギ偽装と水産業界の「闇」
大掛かりな国産ウナギ偽装は、ついに刑事事件に発展した。
問題発覚は農林水産省の調査がきっかけだった。「国産品に偽装された中国産ウナギ蒲焼きが安売りされている」--。「食品表示110番」への告発を基に調査を進めたところ、製造者として「一色フード」なる有限会社が浮上。ところが、所在地の愛知県岡崎市内にあったのは山林だけで、架空会社とわかった。さらにその線上に偽装計画の中心企業2社が浮かび上がった。
農水省が6月25日にJAS法違反で公表した不正の概要はこうだ。約800トンの中国産蒲焼き在庫を抱えていた卸業者・魚秀(実質本社・徳島県)は3~4月にかけ、マルハニチロホールディングス子会社の神港魚類(神戸市)に対して、そのうち256トンを国産品に偽装して販売。この際、商品の素性を隠蔽するため、東京・築地の零細業者2社を介在させた。神港魚類は6月中旬までにそのうち49トンを外部へ販売し、15トンは魚秀に売り戻していた。
巧妙な手口はさしずめ“ウナギロンダリング”。さらに“偽装コネクション”ともいえる裏人脈も蠢(うごめ)いていた。高知県の業者役員が口利き役となり、香川県の水産会社役員(6月15日辞任)が箱詰めなど実行行為を準備したのだ。魚秀社長から神港魚類課長には1000万円の裏金も渡っていた。不正競争防止法違反容疑で強制捜査に入った兵庫・徳島県警は、裏金の趣旨などについて慎重に調べを進めるものとみられる。