追加緩和の選択肢なき日銀を取り巻くリスク 米国のQEの縮小と、中国バブル潰しの帰趨に注目
上海インターバンク市場で6月に勃発したクレジット・クランチ(信用危機)は、シャドーバンキングを拡大させ、かつ短期資金調達に傾きすぎた流動性管理に問題がある銀行に、金融当局が「お仕置き」を与えようとして市場への資金供給を絞ったことがきっかけだった。
逆に言うと、2008年9月にリーマン・ブラザーズが破綻した時のニューヨーク市場や、1997年11月に北海道拓殖銀行や山一証券が破綻したときの東京市場で発生したフリーズとは本質的に異なっていた。ニューヨークや東京のケースでは、債務超過状態の金融機関が多数いるのではないかという恐怖感が市場で強まり、信用リスク懸念から短期金融市場で資金が流れなくなった。今回の中国はそうではなく、流動性の問題だった。それゆえ、中央銀行が資金供給を始めたら短期金利は急低下を見せた。
また、消費は減速を見せているものの、「バブル破裂」という事態にはまだ至っていない。インターネット販売が急速に増えており、消費における比率はもはや米国を上回っていると言われている。しかし、それは中国の消費統計には含まれていないため、実際の消費は統計よりもう少し良いのではないか、という声も聞こえる。自動車販売は好調であり、6月の乗用車販売台数は、BMWは前年比44%増、フォードも同44%増、アウディは同34%増、ポルシェは同18%増だ(日本はトヨタを除くとマイナス圏で苦戦)。
中国政府のバブル潰し政策の影響を注視
中国で不動産価格の本格下落が始まれば、シャドーバンキングが信用供与している非効率なプロジェクト(地方政府の不動産投資プラットフォームなど)が急速に不良化し、システミックリスクが顕在化するだろう。しかし、現時点では中国の大半の都市の住宅価格は(当局の牽制にもかかわらず)まだ上昇を続けている。5月の100都市住宅価格は前月比プラス0.81%(12か月連続の上昇)、前年比はプラス6.9%だった。
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