追加緩和の選択肢なき日銀を取り巻くリスク 米国のQEの縮小と、中国バブル潰しの帰趨に注目
5月下旬以降、QE3の縮小観測に伴って、米モーゲージ30年金利は劇的に上昇した。こういった動きがもし米国経済を冷え込ませると、日本政府は、日本で来年4月の消費税引き上げ後に起こりうる、駆け込み需要の反動減の打撃をより心配するようになり、日銀に追加緩和策を強く要求するだろう。
また、QE3の縮小がエマージング経済からの資金流出を激しくして、それらの経済が不安定化させると、それも日本経済にとってリスクとなりうる。
ニューヨーク市場の一部の参加者からは、「バーナンキ議長のレームダック化が始まったのではないか?」という声が聞こえ始めている。バーナンキが6月19日の記者会見で予想外に前のめり的にQE3縮小プランを述べたのは、来年1月末の自分の退任を美しくするために、スケジュールを逆算して考えるようになった可能性があるかもしれないと彼らは見ている。「さすがのバーナンキも”やりっ放し”で去って行くことへの躊躇があるのでは?」という推論である。
FRB議長交替の来年はイベントリスクも
そういった観点でいえば、市場に安心感を与えられるような次期FRB議長人事をオバマ大統領が発表できるか否かは今後非常に重要である。ちなみに、ブッシュ前大統領がバーナンキをグリーンスパン議長の後継者として指名したのは2005年10月24日だった。
なお、過去を振り返ると、FRB議長が交代した年、あるいはその翌年には、市場が大きく動揺するイベントが何度か発生している。例えば、ボルカーからグリーンスパンに代わった年(1987年)にブラック・マンデーが起きた。グリーンスパンからバーナンキに代わった翌年夏に欧州のインターバンク市場でパニックが生じ、それ以降、米国のサブプライム問題が深刻化していった。議長交代期にはそれまでの「ウミ」が現れやすくなる傾向があるのかもしれない。来年以降はしばらく要注意と言えるだろう。
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